収益認識に対応した契約書作成

新しい「収益認識に関する会計基準」とは?

国際財務報告基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」の2018年1月1日適用開始と並び、2018年3月30日,わが国の企業会計基準委員会がそれをコンバージェンス(日本基準化)した企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「本基準」といいます。)を公表しました。この新たな「収益認識に関する会計基準」は,2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することとされていますが,2018年4月1日から早期適用することができます。

本基準は非上場企業の計算書類にも適用されますか?

本基準は日本基準であり、連結・個別を問わず、会社法の計算書類・連結計算書類に適用されますので、上場企業だけでなく、非上場企業を含む日本国内の株式会社が本基準の適用のために顧客との契約を見直し、内部統制を整備する課題に直面しています。

従来の会計基準と、どのような違いがありますか?

わが国では、従来まで、売上高について実現主義の原則を定めるだけで、収益認識に関する体系的な会計基準は存在しませんでした。本基準は、顧客との“契約”から生じる資産・負債の会計処理に基づいて収益を認識します。企業は,わが国の訴訟制度で執行され得る“契約”に基づき,“対価を受け取る権利”(=法律上の債権)を契約資産として、“財又はサービスを提供する義務”(=法律上の債務その他の契約における約束)を契約負債として、それらの発生(増加)・消滅(減少)によって収益を認識します。契約当初は、これら契約資産と契約負債の測定値が同額であるため純額では貸借対照表に表示されませんが、企業が“財又はサービスを提供する義務”を履行したときに、契約負債の消滅によりポジションが増加し、契約資産を貸借対照表に計上し、収益を認識します。

契約実務への影響

本基準の適用の手順(ステップ)を解説しながら、契約書作成のポイントと契約実務に与える影響を説明します。

STEP1顧客との契約を識別する

最初のステップでは、①法律上の契約の成立を判定し、②本基準の適用対象となる契約を識別します。

ポイント法律上の契約が成立しない限り、企業は収益を認識できません。契約書や注文書など法人の代表者名義の書面を取り交わさない場合は、契約の成立に留意します。継続的取引基本契約では、個別契約の成立を簡便かつ確実に立証できる契約条項を作成します。

STEP2契約における履行義務を識別する

次のステップでは、①契約における約束を識別した後、②別個の財又はサービス(の束)を識別し、最後に③履行義務を識別します。
契約における約束は、必ずしも法律の強制力を伴う必要はなく、顧客の妥当な期待が生じ、対価との“交換”に交渉され、契約の結果として「約束」されるものも含まれます。別個の財又はサービスという概念を介して、企業が“財又はサービスを提供する義務”を履行する過程を忠実に反映する会計単位として一つ又は複数の履行義務を識別します。製品保証(財又はサービスに対する保証)のように,法的な観点から本来の給付義務と保証責任(サービス)が別個かどうかの判定が求められる場合があります。

ポイント 契約書やそれに関連する事実・状況から、ⓐ本来の給付義務(例:目的物の引き渡し)だけでなく,ⓑ契約上の負担又は拘束(例:製品保証、返品義務)、ⓒ付随的に又は販売促進のために提供される財又はサービスの約束(例:カスタマー・ロイヤルティ・ポイント)、ⓓ契約に含意されている約束を抽出し、漏れなく履行義務を識別する必要があります。他の企業の販売に関連する場合には、履行義務の性質(本人か代理人か)も検討します。以下のような業種・業界では,本基準の適用が契約実務に及ぼす影響が大きいので,特に留意し,あらかじめこのステップの適用を想定して契約条項を作成する必要があります。 ● 製品保証を提供するメーカー ● 返品慣行がある業界に属する企業 ● ポイント制度を導入する企業 ● 他の企業の販売に関連する業務を受託する企業 ● 知的財産を取り扱うライセンサー・フランチャイザー

STEP3取引価格を算定する

取引価格とは、約束した財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込んでいる対価の金額をいいます。多くの場合は、固定の契約価格を指しますが、本基準は、取引価格の算定が困難な4つの類型(①変動対価、②重大な金融要素の存在、③現金以外の対価、④顧客に支払われる対価)の指針を示しています。

STEP4取引価格を配分する

ステップ2で識別した履行義務のそれぞれに、ステップ3で算定した取引価格を、独立販売価格の比率に応じて配分します。

取引価格を配分する
STEP5履行義務を充足するとき(につれて)収益を認識する

企業は、約束した財又はサービス(資産)に対する支配を顧客が獲得して、履行義務を充足したときに(又は充足するにつれて)収益を認識します。
ステップ2で識別した履行義務のそれぞれが①一定の期間にわたし充足される履行義務か、又は②一時点で充足される履行義務かを区別します。

  • ①一定の期間にわたり充足される履行義務
    履行義務の完全な充足に向けての進捗度を測定することにより一定の期間にわたり収益を認識します。非転用成果型の請負契約や業務委託契約のように,企業が契約の履行中に顧客から中途解約されたときに法律上対価(損害)をいくら請求できるかによって,一定の期間にわたり収益を認識できるか否かが決まる契約類型があります。
  • ②一時点で充足される履行義務
    履行義務を充足する時点を決定し、その時点で収益を認識します。法的な所有権の移転時期,危険負担,受入検査(検収)などの契約条項が,いつ収益を認識できるかに影響を与えます。

ポイント 以下のような業種・業界でみられる履行過程が一定期間にわたる成果型の請負契約や業務委託契約など(非転用成果型請負・業務委託)では,一定の期間にわたり充足される履行義務に区別するために,その成果が他に転用できないことに加え,法令・判例に従って“企業が現在までに完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利”があると判定される契約条項を作成します。 ● 顧客仕様で受注生産(OEM)する企業 ● 顧客仕様のソフトウェア・システム開発を受託する企業 ● コンサルティングを提供する企業 また、商取引で最も頻繁にみられる契約類型である売買契約などは,一時点で充足される履行義務に区別されますが,企業が企図する一定の時点で収益を認識できるように,対価の支払に関わる条件・期限・同時履行の抗弁、所有権の移転時期、危険負担、検収などに留意して契約条項を作成します。

契約実務の支援

収益認識に対応した契約実務の支援について,以下のようなご依頼に対応いたします。

法律会計顧問

法律会計顧問として法律・会計に関する相談に対応します。一般的な企業法務として、契約書の作成・チェックを行うほか、収益認識時期に関するご要望、ご質問があれば、その相談にも対応いたします。契約条項だけではなく、経済的な実態も聴取し、法的紛争の予防だけでなく、収益認識(財務・業績)の観点からも助言、支援します。

プロジェクト(案件)対応

プロジェクト(案件)として受任し、契約書の作成、マニュアルなどの内部統制の見直しなどを助言・支援いたします。収益認識に対応するために、企業内の契約書(ひな型)全般を体系的に見直したいとき、営業取引の契約実務に関するマニュアルや内部統制を見直したいときなどにご利用ください。

意見書作成

個別・具体的な取引、類型的な取引に関して、本基準に従って、契約の成立・識別、履行義務の識別、一定の期間にわたり充足される履行義務か一時点で充足される履行義務かの区別、履行義務が充足される時点などについて意見書を作成します。企業の財務諸表の作成責任や会計監査に対応したいときなどにご利用ください。

社外役員(社外取締役・社外監査役)/調査委員会 

社外役員(社外取締役・社外監査役)として大局的かつ専門的な視点から、本基準の適用に向けた内部統制などに関し、経営陣に助言したり、内部監査を指導・支援したりします。会計不正や不適切な会計処理に関する社内調査委員会や第三者委員会の委員としても対応いたします。

社内セミナーの支援

本基準を契約・法務の面からも解説できる講師は少なく,次のような課題を抱える企業の社内セミナーに応えています。

● 本基準の概要や契約がどうして重要なのかを知りたい。

● 役員・管理職や法務部門に本基準に対応する必要性を認知してもらいたい。

● 自社の業種・業態に即してどのように準備を進めればよいか知りたい。

詳しくは,こちらをご覧ください。

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