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2018.11.21更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約書」

 

請求済未出荷契約/消化仕入契約

 

2018年11月21日初版 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 8ページ

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「請求済未出荷契約/消化仕入契約」 目次と概要

 

1.物理的占有の移転を伴わない支配の移転

 

本基準は,資産に対する支配の移転の指標の一つとして,企業が資産の物理的占有を移転したことを挙げており(第38項(c)),“支配”(第33項)が物理的占有に随伴して移転することを推定しています。

この指標は,「物理的」占有という資産に対する事実上の支配の動態的な「移転」に着眼するので,観察により客観的に適用することができる反面,占有者の「意思」を捨象しているため,物理的占有の帰属と資産に対する支配の帰属が一致しない場合があります。

物理的占有が移転せず,資産に対する事実上の支配が何ら変わらないにもかかわらず,企業から顧客へと“支配”が移転する場合として,①企業が資産の物理的占有を保持しながら,企業から“支配”が顧客に移転する典型的な契約として請求済未出荷契約があり,逆に,②顧客が資産の物理的占有を保持しながら,企業から“支配”が顧客に移転する典型的な契約として消化仕入契約・寄託品使用高払契約があります。

このうち適用指針が①請求済未出荷契約に関する指針を提供しており,日本の企業会計基準適用指針「収益認識に関する会計基準の適用指針」第30号設例28が②消化仕入契約を取り扱っています。

 

2.適用指針「請求済未出荷契約」の概要

 

企業が販売した商品・製品の物理的占有を保持したまま,顧客に対価を請求する場合があります。

企業は,Step5「企業が履行義務の充足時に(又は充足するにつれて)収益を認識する」において,一時点で充足される履行義務について,当該商品・製品の物理的占有を移転していない(第38項(c)の指標を欠く)場合でも,本基準第38項の他の指標も考慮して総合的に顧客が当該商品・製品の支配を獲得する時点を決定します。しかし,企業が顧客に移転することを約束した当該商品・製品の物理的占有を保持している状況で,その支配が顧客に移転することを無制限に認めると,財務報告において収益認識時期の操作に悪用されるおそれがあります。

適用指針「請求済未出荷契約」(B 79~82)は,企業が販売した商品・製品の物理的占有を保持したまま収益を認識する場合の要件と会計処理を定めています。

 

☞企業が販売した商品・製品の物理的占有を保持したまま収益を認識する場合には,適用指針「請求済未出荷契約」の要件と会計処理に従います。

 

3.請求済未出荷契約

 

● 請求済未出荷契約

請求済未出荷契約とは,企業が商品・製品について顧客に対価を請求したが,将来において顧客に移転するまで企業が当該商品・製品の物理的占有を保持する契約をいいます(B 79)。

例えば,顧客に商品・製品の保管場所がない場合や,顧客の生産スケジュールの遅延等の理由により,顧客がこのような契約の締結を企業に要請する場合があります(B 79)。

このような契約を締結する場合の多くは,顧客が当該商品・製品の使用を指図する能力及び当該商品・製品からの残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力を有しており,当該商品・製品に対する支配を獲得します。逆に,企業は,当該商品・製品を支配せず,代わりに顧客に対して保管サービスを提供している場合があります(B 80)。

 

● 物理的占有の移転を伴わない支配の移転

企業が商品・製品を販売するにあたって請求済未出荷契約が成立した場合には,①企業が当該商品・製品に対する支払を受ける現在の権利を有していること(第38項(a))の指標を満たし,多くの場合,当該契約に当該商品・製品の法的所有権を顧客に移転する旨の明示の合意があるか,又は黙示の合意が含まれると解釈できるため,②顧客が当該商品・製品の法的所有権を有していること(第38項(b))の指標を満たします。

したがって,多くの場合,顧客が当該商品・製品に対する支配(当該商品・製品の使用を指図し,当該商品・製品からの残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力)を獲得しており,当該商品・製品の物理的占有の移転が伴わないことは,顧客がその支配を獲得することを妨げるものではありません。

 

☞請求済未出荷契約(企業が商品・製品について顧客に対価を請求したが,将来において顧客に移転するまで企業が当該商品・製品の物理的占有を保持する契約)が成立した場合の多くは,顧客が当該商品・製品に対する支配を獲得しており,当該商品・製品の物理的占有の移転が伴わないことは,顧客がその支配を獲得することを妨げるものではありません。

 

4.請求済未出荷契約の要件と会計処理

 

● 趣旨

商品・製品の販売について,企業が,本基準第38項(c)の指標を満たさず,当該商品・製品の物理的占有を保持したまま,本基準第38項の他の指標も考慮して総合的に当該商品・製品の支配を顧客に移転したと判定することを無制限に容認すれば,請求済未出荷契約が財務報告において収益認識時期の操作に悪用されるおそれがあります。

そこで,適用指針は,企業が顧客に移転することを約束した商品・製品の物理的占有を保持している状況では,本基準第38項の指標を考慮するだけでなく,請求済未出荷契約の成立やその実態,当該商品・製品の客観的な状態について一定の要件を満たさない限り,当該商品・製品の支配を顧客に移転したと判定できないものとしました。

 

● 要件

企業は,商品・製品の販売(一時点で充足される履行義務)について,顧客が当該商品・製品の支配を獲得する時点を決定するため,本基準第38項の指標を考慮することに加え,企業が顧客に移転することを約束した商品・製品の物理的占有を保持している状況で,顧客が商品・製品の支配を獲得したと判定するためには,以下の要件のすべてを満たしていなければなりません(B 80,81)。

(a) 企業と顧客との間に請求済未出荷契約(企業が商品・製品について顧客に対価を請求したが,将来において顧客に移転するまで企業が当該商品・製品の物理的占有を保持する契約)が成立したこと

 請求済未出荷契約の成立が前提となりますので,企業は,Step1「顧客との契約を識別する」で,商品・製品の販売(売買契約)に加えて請求済未出荷契約を識別する必要があります(2010ED B 61)。

(b) 請求済未出荷契約の理由が実質的であること(例えば,顧客が当該契約を要請した)

 適用指針は,請求済未出荷契約が財務報告において収益認識時期の操作に悪用されるおそれがあることから,特に請求済未出荷契約に経済的な実態が伴うことを要件としています。

(c) 当該資産が顧客に属するものとして区分して識別されていること

 種類物(不特定物)の給付を目的とする契約では,企業の物理的占有下に同一の種類物が顧客との契約において約束した所定の数量を超えて存在する可能性があり,契約の目的となる目的物(商品・製品)が客観的・具体的に区分して識別されていなければ,法律上,当該商品・製品の法的所有権が顧客に移転しません。

(d) 当該資産は現時点で顧客への物理的な移転の準備ができていること

 企業は,現時点で,顧客による資産の使用の指図に応じ,いつでも顧客に当該商品・製品の物理的占有を移転できるような準備ができていなければなりません。

 上記(c),(d)の要件を満たすときは,法律上,企業の住所・営業所等で種類物(不特定物)を引き渡すべき債務(取立債務)につき,顧客に移転する法的所有権の対象(客体)が特定されます。

(e) 企業が当該資産を使用したり別の顧客に振り向けたりする能力を有しないこと

 企業が当該商品・製品を使用したり別の顧客に振り向けたりする能力を有するときは,顧客が当該商品・製品を支配していないことになります。

 

● 会計処理

収益の認識

企業は,上記要件をすべて満たしたうえで,本基準第38項の指標を考慮し,顧客が請求済未出荷の商品・製品の支配を獲得したと決定した時点で,当該商品・製品の販売による収益を認識します。

残存履行義務の検討

企業は,本基準第73項~第86項に従って取引価格の一部を配分しなければならない残存履行義務(例えば,保管サービスに係る義務)を有しているかどうかについて,本基準第22項~第30項に従って検討しなければなりません(B 82)。

 

☞企業は,顧客に移転することを約束した商品・製品(資産)の物理的占有を保持している状況では,(a)企業と顧客との間に請求済未出荷契約が成立したこと,(b)その理由が実質的であること,(c)当該資産が顧客に属するものとして区分して識別されていること,(d)当該資産は現時点で顧客への物理的な移転の準備ができていること,(e)企業が当該資産を使用したり別の顧客に振り向けたりする能力を有しないことの要件をすべて満たしたうえで,本基準第38項の指標を考慮し,顧客が当該資産の支配を獲得したと決定した時点で収益を認識します。この場合,企業は,取引価格の一部を配分しなければならない残存履行義務(例えば,保管サービスに係る義務)を有しているかどうかについて,本基準第22項~第30項に従って検討しなければなりません。

 

5.消化仕入契約・寄託品使用高払契約

 

● 消化仕入契約・寄託品使用高払契約

消化仕入契約・寄託品使用高払契約は,企業が商品・製品の物理的占有を顧客に移転したが,将来において顧客が販売・使用・消費等のために払い出すときに当該商品・製品を購入し,企業がその対価を請求する契約をいいます。

例えば,企業が顧客の店舗に商品を搬入,陳列したり,顧客の病院に医薬品を備え置いたり,顧客のタンクに原料を搬入したりして,顧客が商品・医薬品・原料の販売・使用・消費等をもって購入の意思を表示する場合があります。

このような契約の多くは,企業は,顧客に対し,契約に従った一定の利用(販売・使用・消費等)のために商品・製品を払い出すことを許可し,それ以外の利用を制限する権利を有しており,顧客が当該商品・製品を払い出すまでは依然として当該商品・製品の使用を指図する能力及び当該商品・製品からの残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力を有しており,当該商品・製品を支配しています。逆に,顧客は,当該商品・製品を払い出すまでは,当該商品・製品を支配しておらず,代わりに企業に対して保管,販売の手配等のサービスを提供している場合があります。

なお,消化仕入契約は,小売業界において小売業者からみた仕入先との契約の種類の一つであり,通常の売買契約は「買取仕入契約」と呼ばれます。消化仕入契約は,供給者が商品の法的所有権を有する点で,法律上の委託販売契約(取次委託)と類似しますが,委託販売契約では供給者(委託者)から需要者へ直接に法的所有権が移転し,流通業者(受託者)が商品の法的所有権を一時的にも取得することがありません。

 

● 物理的占有の移転を伴わない支配の移転

企業が商品・製品を販売するにあたって消化仕入契約・寄託品使用高払契約が成立した場合は,顧客が販売・使用・消費等のために商品・製品を払い出した時点で,①企業が当該商品・製品に対する支払を受ける現在の権利を有していること(第38項(a))の指標を満たし,多くの場合,当該時点で当該商品・製品の法的所有権を移転する旨の明示の合意があるか,又は黙示の合意が含まれると解釈できるため,②当該商品・製品の法的所有権が移転すること(第38項(b)参照)の指標を満たします。

したがって,多くの場合,顧客が販売・使用・消費等のために商品・製品を払い出した時点で,企業が当該商品・製品に対する支配(当該商品・製品の使用を指図し,当該商品・製品からの残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力)を移転し,当該商品・製品の物理的占有の移転が伴わないことは,その支配が移転することを妨げるものではありません。

 

● 寄託品使用高払契約の会計処理

寄託品使用高払契約(企業が商品・製品の物理的占有を顧客に移転したが,将来において顧客が使用・消費等のために払い出すときに当該商品・製品を購入し,企業がその対価を請求する契約)について,企業は,Step5「企業が履行義務の充足時に(又は充足するにつれて)収益を認識する」において,一時点で充足される履行義務について,“支配”の要件(第33項)を直接適用するほか,支配の移転の指標(第38項)を考慮し,総合的に顧客が当該商品・製品の支配を獲得する時点を決定します。

寄託品使用高払契約では,企業は,顧客が商品・製品を購入する前に当該商品・製品の物理的占有を顧客に移転しますが,その時点では顧客は当該商品・製品の支配を獲得していません。多くの場合,顧客が使用・消費等のために当該商品・製品を払い出した時点で当該商品・製品の支配を獲得しますので,企業は,その時点で履行義務を充足し,収益を認識します。

 

☞消化仕入契約・寄託品使用高払契約(企業が商品・製品の物理的占有を顧客に移転したが,将来において顧客が販売・使用・消費等のために払い出すときに当該商品・製品を購入し,企業がその対価を請求する契約)が成立した場合の多くは,顧客が販売・使用・消費等のために商品・製品を払い出した時点で,企業が当該商品・製品に対する支配を移転し,当該商品・製品の物理的占有の移転が伴わないことは,その支配が移転することを妨げるものではありません。

 

6.消化仕入契約の会計処理

 

● 会計処理の概要

消化仕入契約の収益の認識については,企業の会計処理と顧客の会計処理に分けられます。

消化仕入契約は,一般に,企業(供給者)が商品・製品を需要者(最終顧客)に提供する過程に顧客(流通業者)が関与しているケースですので,企業は,適用指針「委託販売契約」(B 77,78)に従って会計処理する必要があり,他方,顧客は,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」(B 34~38)に従って会計処理する必要があります。

 

● 企業の会計処理

消化仕入契約における売主(仕入先)である企業からみると,企業(供給者)が商品・製品を需要者(最終顧客)に提供する過程に他の当事者(流通業者)が関与しており,需要者が当該商品・製品の支配を獲得する前に,企業から他の当事者に当該商品・製品の物理的占有を移転します。

企業は,Step5「企業が履行義務の充足時に(又は充足するにつれて)収益を認識する」において,一時点で充足される履行義務について,顧客が当該商品・製品の支配を獲得する時点を決定するため,適用指針「委託販売契約」(B 77,78)に従って,他の当事者にその物理的占有を移転した時点で(第38項(c)),当該他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得したかどうかを判定します(B 77)。

この判定にあたっては,他の当事者に当該商品・製品の物理的占有を移転した時点だけではなく,需要者(最終顧客)に商品・製品が移転される前に当該他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得するのかどうかも併せて検討します。この検討は,企業の立場から,当該他の当事者が,適用指針「本人なのか代理人なのか検討」に従って,当該商品・製品が需要者に移転される前に他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得するかどうかという評価を行うことにほかなりません。

消化仕入契約では,法律上の契約類型が売買契約であるため,他の当事者が最終的には当該商品・製品の法的所有権を取得し,それと同時に,需要者(最終顧客)にその法的所有権を移転します。しかし,当該商品・製品の法的所有権は一時的に他の当事者を経由するにすぎず,一般に企業が在庫リスクを有しています(B 37(b)参照)。そのため,需要者(最終顧客)に当該商品・製品を移転する約束の履行に対する主たる責任(B 37(a)参照)や価格の設定における裁量権(B 37(c)参照)が企業又は他の当事者のいずれにあるかを考慮し,最終的に需要者に移転するまで他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得することがなく,企業が当該商品・製品を支配していると判定する場合が少なくありません。

需要者に移転するまで他の当事者が商品・製品の支配を獲得することがない場合には,企業にとって需要者が“顧客”であり,他の当事者と需要者との間に成立した売買契約を顧客との契約とみなし,当該商品・製品と交換に権利を得ると見込んでいる対価(顧客対価)を収益として認識します。企業と他の当事者との間の消化仕入契約は,会計上は委託販売契約として取り扱います。

逆に,需要者に移転する前に他の当事者が商品・製品の支配を獲得する場合には,企業にとって他の当事者が“顧客”であり,他の当事者との消化仕入契約に基づき,当該商品・製品と交換に権利を得ると見込んでいる対価(顧客対価)を収益として認識します。

このように,消化仕入契約では,企業は,当該商品・製品の支配が移転する時点を決定するというよりも,他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得するかどうか,言い換えれば,企業が当該商品・製品に対する支配を移転する相手方(企業にとっての“顧客”)が他の当事者なのか需要者(最終顧客)なのかを決定することにほかなりません。

 

● 顧客の会計処理

消化仕入契約における買主(小売業者)である企業からみると,他の当事者(供給者)が商品・製品を顧客(需要者)に提供する過程で,企業が当該商品・製品の提供に関与しており,需要者が当該商品・製品の支配を獲得する前に,他の当事者から企業に当該商品・製品の物理的占有が移転されます。

企業は,Step2「契約における履行義務を識別する」において,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」(B 34~38)に従って,企業の約束の性質について,①顧客に対し,企業が商品・製品を自ら提供することを約束しているのか(企業は本人である),②他の当事者に対し,他の当事者によって商品・製品が顧客に提供されるように手配することを約束しているのか(企業は代理人である)を判定します(B 34)。

消化仕入契約では,一般に企業は在庫リスクを有しません(B 37(b))。そのため,顧客に当該商品・製品を移転する約束の履行に対する主たる責任(B 37(a))や価格の設定における裁量権(B 37(c))が企業又は他の当事者のいずれにあるかを考慮し,当該商品・製品が顧客に移転される前に企業が当該商品・製品の支配を獲得することがなく,企業は,他の当事者に対し,他の当事者によって商品・製品が顧客に提供されるように手配することを約束している(企業が代理人である)と判定する場合が少なくありません。

 

☞法律上の契約類型が売買契約である消化仕入契約では,商品・製品の法的所有権が一時的に顧客(買主・小売業者)を経由するにすぎず,一般に企業(売主・仕入先)が在庫リスクを有しています。そのため,需要者(最終顧客)に当該商品・製品を移転する約束の履行に対する主たる責任や価格の設定における裁量権が企業又は顧客のいずれにあるかを考慮し,最終的に需要者に移転するまで顧客が当該商品・製品の支配を獲得することがなく,企業が当該商品・製品を支配していると判定する場合が少なくありません。この場合,消化仕入契約は委託販売契約として取り扱います。

投稿者: 弁護士 片山 智裕

2018.11.09更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約書」

 

委託販売契約

 

2018年11月9日初版 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 10ページ

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「委託販売契約」 目次と概要 

 

1.適用指針「委託販売契約」の概要

 

企業は,商品・製品を需要者(最終顧客)に販売するために,他の当事者(流通業者・販売業者)にその物理的占有を移転する場合があります。

企業は,Step5「企業が履行義務の充足時に(又は充足するにつれて)収益を認識する」において,一時点で充足される履行義務について,顧客が当該商品・製品の支配を獲得する時点を決定するため,他の当事者にその物理的占有を移転する場合(第38項(c))には,当該他の当事者がその時点で当該商品・製品の支配を獲得したかどうかを判定します(B 77)。

他の当事者が支配を獲得する場合には,他の当事者が“顧客”であり,企業は,他の当事者との間の売買契約(独立の販売)を識別し,顧客である他の当事者に当該商品・製品の支配を移転した時点で履行義務を充足し,収益を認識します。

他方,他の当事者が支配を獲得していない場合には,需要者(最終顧客)が“顧客”であり,企業は,需要者(最終顧客)との間に成立した,又は成立したとみなす売買契約を識別し,顧客である需要者に当該商品・製品の支配を移転した時点で履行義務を充足し,収益を認識します。企業と他の当事者との間の契約は委託販売契約であり,他の当事者に当該商品・製品の物理的占有を移転した時に収益を認識してはなりません(B 77)。

適用指針「委託販売契約」(B 77,78)は,企業が商品・製品を需要者に販売するために,他の当事者にその物理的占有を移転する場合に,他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得するかどうかを判定するための指針を提供しています。

☞企業は,商品・製品を需要者(最終顧客)に販売するために,他の当事者(流通業者・販売業者)にその物理的占有を移転する場合には,当該他の当事者がその時点で当該商品・製品の支配を獲得したかどうかを判定します。他の当事者が支配を獲得していない場合には,企業と他の当事者との間の契約は委託販売契約であり,他の当事者に当該商品・製品の物理的占有を移転した時に収益を認識してはなりません。

 

2.適用指針「委託販売契約」とは

 

● 委託販売契約とは

委託販売契約とは,他人のために財の販売を引き受ける契約をいいます。下の模式図では,企業(A)と他の当事者(B)との間の契約が,企業(A)が他の当事者(B)に対して販売業務を委託するものであり,法律上の契約類型は,(準)委任契約(委託契約)です。

委託販売契約の目的は,財(委託者の商品・製品)を販売する手配サービスです。

 

● 支配の移転の時点

適用指針「委託販売契約」は,上の模式図で,委託者である企業が,いつの時点で商品・製品の対価(顧客対価)を収益として認識すべきか,という問題を取り扱います。

企業(供給者)が商品・製品を需要者Cに提供する過程に流通業者Bが関与している場合には,一般に,商品・製品が企業(A)から流通業者Bを介して需要者Cに移転しますので,需要者Cが当該商品・製品の支配を獲得する前に,企業から流通業者Bに当該商品・製品の物理的占有を移転します。

企業は,商品・製品を顧客に移転する履行義務を識別していますので,流通業者Bに当該商品・製品の物理的占有を移転した時点で,流通業者Bが当該商品・製品の支配を獲得する場合には,流通業者Bが“顧客”であり,その時点で履行義務を充足することになります。逆に,流通業者Bが当該商品・製品の支配を獲得していない場合には,需要者Cが“顧客”であり,未だ顧客に当該商品・製品の支配を移転していないので,流通業者Bに当該商品・製品の物理的占有を移転した時点では履行義務を充足していません。

このように,適用指針「委託販売契約」では,流通業者Bが商品・製品の物理的占有の移転を受けた時に当該商品・製品の支配を獲得するか否かという問題に焦点を当てます(第38項(c),B 77)。

 

● 契約の相手方

企業は流通業者Bに商品・製品の物理的占有を移転した時点で,流通業者Bが当該商品・製品の支配を獲得する場合には,企業にとって流通業者Bが“顧客”であり,Step1「顧客との契約を識別する」では,企業と流通業者Bとの間の売買契約(独立の販売)を識別すべきであったことになり,顧客である流通業者Bに当該商品・製品の支配を移転した時点で収益を認識します(BC 385E)。

逆に,流通業者Bが当該製品・商品の支配を獲得していない場合には,企業にとって需要者Cが“顧客”となります。しかし,企業と顧客である需要者Cとの間には必ずしも直接に契約が成立するわけではありません。

他方で,企業と流通業者Bとの間に委託販売契約(媒介委託を除きます。)が成立していない限り,企業と顧客である需要者Cとの間に直接に契約が成立せず,顧客との契約が成立したとみなすこともできませんので,企業にとって流通業者Bとの間の委託販売契約(取次委託・代理委託)を識別することが収益を認識する前提となります。したがって,企業は,Step1「顧客との契約を識別する」では,流通業者Bとの間の委託販売契約(取次委託・代理委託)を識別するとともに,企業と需要者Cとの間に成立した,又は成立したとみなす売買契約を識別すべきであったことになり,顧客である需要者Cに当該商品・製品の支配を移転した時点で収益を認識します。

このように,適用指針「委託販売契約」は,企業にとって契約の相手方すなわち“顧客”が需要者Cなのか,流通業者Bなのかという問題にほかなりません。

適用指針「委託販売契約」は,商品・製品の支配が移転する時点が異なることに着眼し,Step5「企業が履行義務の充足時に(又は充足するにつれて)収益を認識する」で判定する支配の移転の時点の問題として取り扱います(第38項(c))。しかし,企業から直接に商品・製品の支配が移転する相手方すなわち契約の相手方が異なることに着眼すると,本来は,契約開始時において,Step1「顧客との契約を識別する」で,企業と流通業者Bとの間の契約の内容を検討すべき問題として位置づけられます。

 

☞適用指針「委託販売契約」は,流通業者が商品・製品の物理的占有の移転を受けた時に当該商品・製品の支配を獲得するか否かという問題に焦点を当てます。また,適用指針「委託販売契約」は,企業から直接に商品・製品の支配が移転する相手方すなわち契約の相手方“顧客”が需要者なのか,流通業者なのかという問題であり,契約開始時に,Step1「顧客との契約を識別する」で,企業と流通業者との間の契約の内容を検討すべき問題として位置づけられます。

 

3.本人なのか代理人なのかの検討との関係

 

● 代理人

委託販売契約から生じる収益は,他の当事者(B)が認識します。委託販売契約では,受託者である他の当事者(B)は,委託者である企業(A)に対し,商品・製品を販売する手配サービスを移転するので,「本人なのか代理人なのかの検討」では自らを代理人と判定し,その手配サービスと交換(同価値性)の関係にある対価(報酬・手数料)を収益として認識します。

適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」(B 34~38)で,他の当事者(B)が自らを代理人と判定するケースには,企業(A)と他の当事者(B)との間の契約が委託販売契約である場合が含まれます。

 

● 適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」

他の当事者(B)がいったん企業の商品・製品の支配を獲得した後にその支配を需要者(C)に移転するときは,他の当事者(B)は,本人として当該商品・製品自体を自ら需要者(C)に移転するという履行義務を充足しますので,顧客対価を収益として認識することが当該履行義務の充足について権利を得る対価を忠実に描写します。逆に,他の当事者(B)が当該商品・製品の支配を獲得しないときは,当該商品・製品を顧客に移転することができず,企業(A)が直接その支配を顧客に移転しますので,企業(A)が顧客対価を収益として認識すべきです。他の当事者(B)は,代理人として当該商品・製品が顧客に提供されるように手配するという履行義務を充足しますので,その手配サービスと交換(同価値性)の関係にある対価(報酬・手数料)を収益として認識することが当該履行義務の充足について権利を得る対価を忠実に描写します。

このように,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」では,商品・製品が需要者に移転される前に他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得するか否かという問題に焦点を当てます(BC 380,385C~D)。

 

● 本人なのか代理人なのかの検討との関係

適用指針「委託販売契約」において,企業(A)の立場から,他の当事者(B)に商品・製品の物理的占有を移転する場合に他の当事者(B)が当該商品・製品の支配を獲得するかどうかという評価を行うことと,適用指針「本人なのか代理人なのか検討」において,他の当事者(B)の立場から,商品・製品が需要者(C)に移転される前に他の当事者(B)が当該商品・製品の支配を獲得するかどうかという評価を行うことは,同一の事象を異なる立場から評価しているという“裏返し”の関係にあります。

 

☞商品・製品が需要者(C)に移転される前に他の当事者(B)が当該商品・製品の支配を獲得するかどうかという同一の事象について,適用指針「委託販売契約」で企業(A)の立場から評価することと,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」で他の当事者(B)の立場から評価することとは“裏返し”の関係にあります。

 

4.委託販売契約

 

● 委託販売契約

委託販売契約とは,他人のために財の販売を引き受ける契約をいい,①「他人のため」②「財の販売」を③「引き受ける」という3つを要素とします。

 

● 他人のため

「他人のため」とは,少なくとも他人の計算(経済上の効果)において行うことを意味し,他人の権利義務(法律上の効果)において行うことを含みます。

 

● 財の販売

「販売」は売買契約を指し,法律上,売主の地位が受託者である他の当事者にある場合と委託者である企業にある場合があります。

 

自己の名をもって販売する場合(取次委託)

受託者が自己の名をもって他人のために財の販売を引き受ける委託販売契約(法律上「取次委託販売」と呼ばれます。)では,受託者が売主として顧客との間で売買契約を締結します。「自己の名をもって」とは,受託者自らが法律行為の当事者となり,その行為から生じる権利義務の主体となることをいいます。財の流通に関わる商取引では,受託者が自己の名をもって販売することが少なくありません。

企業と顧客との間には,法律上,売買契約は成立していません。しかし,企業と受託者との間に委託販売契約が成立している状況では,実質(経済)的には,企業は,受託者と売買契約を締結する顧客に対し,受託者を介して,対価を受け取る強制可能な権利を有し,財又はサービスを提供する強制可能な義務を負っているのと同視することができます。そこで,企業と受託者との間で委託販売契約(取次委託)が成立している場合には,受託者と売買契約を締結した顧客との間で企業が同一内容の売買契約を締結したものとみなし,当該契約に本基準を適用します。

 

他人の名をもって販売する場合(代理委託・媒介委託)

受託者が他人の名をもって他人のために財の販売を引き受ける委託販売契約では,委託者が売主として顧客との間で売買契約を締結します。①受託者が委託者の代理人として顧客と売買契約(法律行為)を締結する場合(法律上「代理委託販売」と呼ばれます。)と,②受託者が委託者と顧客との間の売買契約の成立のために媒介(事実行為)を行う場合(法律上「媒介委託販売」と呼ばれます。)があります。

代理委託

代理委託では,受託者は委託者の代理人として顧客との間で売買契約を締結しますが,その契約にあたって,委託者の名を表示し,受託者が委託者のために(代理人として)法律行為をすることを表示します(顕名)。代理人である受託者の名を併記するのが通常ですが,併記しない場合もあります。

媒介委託

媒介委託では,受託者は顧客との間の売買契約の成約に向けて事実行為(いわゆる仲介・周旋・斡旋・勧誘等)を行うだけで,企業自らが顧客と売買契約を締結します。

企業は,企業と顧客との間に成立した売買契約に本基準を適用します。ただし,代理委託の場合には,企業と受託者との間に委託販売契約(代理委託)が成立し,受託者に代理権が存在することが前提となります。 

 

● 引き受ける

受託者は,委託者から委託を受けた販売事務を受託します。代理委託では,委託者のために法律行為(売買契約)を行うための代理権の授与を受けることも含まれます。

 

☞委託販売契約とは,他人のために財の販売を引き受ける契約をいい,顧客との間で売買契約を,①受託者が売主として締結する場合(取次委託)と,②受託者が代理人となり,委託者が売主として締結する場合(代理委託),③受託者が媒介(成約に向けた事実行為)をするだけで委託者が売主として締結する場合(媒介委託)があります。取次委託では,企業は,受託者と顧客との間の売買契約を顧客との契約とみなして本基準を適用します。

 

5.委託販売契約の識別

 

企業は,他の当事者(流通業者)とは常に自らが当事者として契約を締結しており,一般に契約書その他の文書により契約の内容を確認することができますので,Step1「顧客との契約を識別する」で,流通業者を顧客とする独立の販売なのか,需要者を顧客とする委託販売契約なのかを判定するため,企業と他の当事者との間の法律上の契約の性質を考慮することが有用になります。

企業と他の当事者との間の契約につき,法律上の委託販売契約(取次委託・代理委託・媒介委託)を識別できれば,適用指針において委託販売契約として取り扱われることが明らかですが,法律上の売買契約である場合には,指標(B 78)を考慮し,独立の販売なのか,委託販売契約なのかを判定する必要があります。

 

☞企業と他の当事者との間の契約につき,法律上の委託販売契約(取次委託・代理委託・媒介委託)を識別できれば,適用指針において委託販売契約として取り扱われることが明らかですが,法律上の売買契約である場合には,指標(B 78)を考慮し,独立の販売なのか,委託販売契約なのかを判定する必要があります。

 

6.委託販売契約の指標

 

● 他の当事者に対する物理的占有の移転と支配の獲得

企業は,商品・製品を需要者(最終顧客)に販売するために,他の当事者(流通業者・販売業者)にその物理的占有を移転する場合には,当該他の当事者がその時点で当該商品・製品の支配を獲得したかどうかを判定します(B 77)。

他の当事者が支配を獲得する場合

他の当事者が“顧客”であり,企業は,他の当事者との間の売買契約(独立の販売)を識別し,顧客である他の当事者に当該商品・製品の支配を移転した時点で履行義務を充足し,収益を認識します(BC 385E)。

他の当事者が支配を獲得していない場合

需要者(最終顧客)が“顧客”であり,企業は,需要者(最終顧客)との間に成立した,又は成立したとみなす売買契約を識別し,顧客である需要者に当該商品・製品の支配を移転した時点で履行義務を充足し,収益を認識します。

企業と他の当事者との間の契約は委託販売契約であり,他の当事者に当該商品・製品の物理的占有を移転した時に収益を認識してはなりません(B 77)。

 

● 委託販売契約の指標

企業と他の当事者との間の契約が委託販売契約であることを示す指標には,例えば,次の(a)~(c)があります(B 78)。

所定の事象(販売業者による顧客への財の販売など)が生じるまで,又は所定の期間が満了するまで,商品・製品を企業が支配している(B 78(a))

企業は,所定の事象が生じるまで,又は所定の期間が満了するまでの間に,支配の概念(第33項)を直接適用し,企業が商品・製品を支配しているかどうかを判定します。企業が商品・製品を支配していれば,他の当事者は当該商品・製品の支配を獲得していません。

企業が財の返還を要求するか又は第三者(別の販売業者など)に製品を移転することができる(B 78(b))

企業が他の当事者に商品・製品の返還を要求したり,第三者に商品・製品を振り向けたりできることは,企業が当該商品・製品を支配していることを示しており,顧客は当該商品・製品の支配を獲得していません。

他の当事者が製品に対して支払う無条件の義務を有していない(ただし,預け金の支払が要求される場合がある)(B 78(c))

他の当事者が,企業に対し,商品・製品と交換(同価値性)の関係のある対価(預け金は該当しません。)を支払う無条件の義務を負う場合には,他の当事者が当該商品・製品の支配を獲得していることを示す指標であり(第38項(a)),委託販売契約の受託者(代理人)ではなく,独立の販売であることを示します。

他の当事者が,条件付きで商品・製品の対価を支払う義務を負う場合(例えば,需要者(最終顧客)に当該商品・製品を販売したという条件が付されている場合)には,委託販売契約の受託者(代理人)である可能性があります。

 

☞企業は,商品・製品を需要者(最終顧客)に販売するために,他の当事者(流通業者・販売業者)にその物理的占有を移転する場合には,当該他の当事者がその時点で当該商品・製品の支配を獲得したかどうかを判定します。委託販売契約であることを示す指標として,例えば,(a)所定の事象(販売業者による顧客への財の販売など)が生じるまで,又は所定の期間が満了するまで,商品・製品を企業が支配していること,(b)企業が財の返還を要求するか又は第三者(別の販売業者など)に製品を移転することができること,(c)他の当事者が製品に対して支払う無条件の義務を有していないことなどがあります。

投稿者: 弁護士 片山 智裕

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