ニュースレター

2017.10.28更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約書」

 

一定の期間にわたり充足される履行義務

 

2017年10月28日初版 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 9ページ

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

このページでは,その要約のみ配信しております。

NEWSLETTER15 

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

また,事務所セミナーなどのご案内をご郵送することもあります。

 

 

「一定の期間にわたり充足される履行義務」 目次と概要

 

1.Step5-② 一定の期間にわたり充足される履行義務

 

Step5「企業が履行義務の充足時に(又は充足するにつれて)収益を認識する」のサブ・ステップ5-①履行義務の属性の判定により,一つ又は複数の履行義務が一定の期間にわたり充足されると判定した場合,企業は,一定の期間にわたり充足される履行義務のそれぞれについて,当該履行義務の完全な充足に向けての進捗度を測定することにより,収益を一定の期間にわたり認識します(第39項)。

企業は,顧客に移転することを約束した財又はサービスの性質を考慮し,当該財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を描写するように,適切な進捗度の測定方法を選択,適用しなければなりません(第41項)。

 

2.履行義務の完全な充足に向けての進捗度

 

進捗度を測定する目的

進捗度を測定する目的は,企業が約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を描写することにあります(第39項)。

進捗度の測定方法はさまざま考えられますが,企業は,その測定方法を自由な裁量により恣意的に選択するのではなく,進捗度を測定する目的に整合する適切な測定方法を選択しなければなりません(BC 159)。

 

単一性の原則

企業は,一定の期間にわたり充足される履行義務のそれぞれについて,単一の進捗度の測定方法を適用しなければなりません(第40項)。

 

一貫適用の原則

企業は,特定の履行義務に選択した進捗度の測定方法を,類似の履行義務及び類似の状況に首尾一貫して適用しなければなりません(第40項)。

 

再測定の原則

企業は,各報告期間末において,一定の期間にわたり充足される履行義務の完全な充足に向けての進捗度を再測定しなければなりません(第40項)。

 

☞企業は,約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行を描写する目的に整合する適切な進捗度の測定方法を選択しなければなりません。企業は,履行義務のそれぞれについて,単一の進捗度の測定方法を適用し,類似の履行義務及び類似の状況に首尾一貫して適用しなければなりません。

 

3.進捗度の測定方法

 

進捗度の測定方法の選択

企業は,顧客に移転することを約束した財又はサービスの性質を考慮し,当該財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を描写する目的に整合する適切な進捗度の測定方法を選択しなければなりません(第41項)。

 

進捗度の測定方法の適用

a 企業は,進捗度の測定方法を適用するにあたって,企業が顧客に支配を移転しない財又はサービスを進捗度の測定値から除外しなければなりません(第42項)。

特にインプット法では,後に述べるとおり,企業が顧客に支配を移転しない財又はサービスに生じたインプット(コスト)や,財又はサービスの顧客への移転に寄与しないインプット(コスト)を除外しなければなりません(B 19(a))。

b 企業は,進捗度の測定方法を適用するにあたって,企業が履行義務を充足するために顧客に支配を移転する財又はサービスを進捗度の測定値に含めなければなりません(第42項)。

特にアウトプット法では,後に述べるとおり,選択する指標によっては,顧客に支配を移転した財又はサービスの一部を測定しない場合がありますので,企業は,履行義務を充足するために顧客に支配を移転する財又はサービスをすべて反映するアウトプットを指標として選択すべきです(B 15)。

 

進捗度の測定値の見直し

企業は,各報告期間末において,履行義務を完全に充足した時における結果(基準値)の変動を反映するため,進捗度の測定値を見直さなければなりません。進捗度の測定値の変更は,会計上の見積りの変更として会計処理しなければなりません(第43項)。

 

☞企業は,顧客に移転することを約束した財又はサービスの性質を考慮し,適切な進捗度の測定方法を選択します。その適用にあたっては,財又はサービスの顧客への移転に関係・寄与しない活動・事象を進捗度の測定値から除外し,逆に,顧客に支配を移転する財又はサービスを漏れなく進捗度の測定値に含めます。企業は,各報告期間末において,履行義務を完全に充足した時における結果(基準値)を見直し,進捗度の測定値を変更するときは,会計上の見積りの変更として会計処理します。

 

4.アウトプット法

 

アウトプット法

アウトプット法は,現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を直接的に測定し,契約において約束した残りの財又はサービスの顧客にとっての価値との比率に基づいて収益を認識します(B 15)。

「顧客にとっての価値」は,契約における企業の履行の客観的な測定値を指し,個々の財又はサービスの市場価格又は独立販売価格や,財又はサービスに組み込まれたと顧客が認識している価値を評価する必要はありません(BC 163)。

 

指標の例

指標として,例えば,現在までに履行を完了した部分の調査,達成した成果の評価,達成したマイルストーン,経過期間,生産単位数,引渡単位数などがあります(B 15,BC 163)。

 

選択の留意点

アウトプット法は,一般的に,選択する指標が直接的に観察可能でないものもあり,適用に必要な情報が過大なコストをかけずに入手できないためにインプット法を選択する必要がある場合があります(B 17)。

アウトプット法を選択するときは、企業は,事実及び状況を考慮し,選択する指標が,約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を適切に描写するかどうかに留意します(BC 166)。

● 選択する指標が顧客に支配を移転した財又はサービスの一部を測定しない場合には,企業の履行を忠実に描写しません。例えば,生産単位数又は引渡単位数を指標とするときに,報告期間末において,企業の履行により顧客が支配する仕掛品又は製品が生産されているが,指標の測定値にそれが含まれていない場合には,企業の履行を忠実に描写しません(B 15,BC 165)。

● 選択する指標の単位が一律に顧客にとって同価値でない場合には,企業の履行を忠実に描写しません。例えば,生産単位数又は引渡単位数を指標とするときに,設計と製造の両方を提供する契約で,選択する指標の各項目が一律に同価値でない場合には,企業の履行を忠実に描写しませんが,同価値の標準品目を顧客に個々に移転する長期製造契約では,企業の履行を忠実に描写します(BC 166)。

 

実務上の便法

企業が現在までに完了した企業の履行の顧客にとっての価値に直接対応する金額で顧客から対価を受ける権利を有している場合(例えば,企業が提供したサービスの時間数ごとに固定金額を請求するサービス契約)には,企業は,請求する権利を有している金額で収益を認識することができます(B 16,BC 167)。

 

☞企業は,例えば,達成した成果やマイルストーン,経過期間,生産単位数,引渡単位数など財又はサービスの顧客にとっての客観的な価値を直接的に反映する指標により進捗度を測定する方法(アウトプット法)を選択するときは,必要な情報を入手するコストのほか,選択する指標が,顧客に支配を移転した財又はサービスを漏れなく測定し,かつ,その単位が一律に顧客にとって同価値かなど,約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を適切に描写するかどうかに留意します。企業は,現在までに完了した企業の履行の顧客にとっての価値に直接対応する金額で顧客から対価を受ける権利を有している場合には,請求する権利を有している金額で収益を認識することができます。

 

5.インプット法

 

インプット法

インプット法は,履行義務の充足に使用されたインプットが,当該履行義務を完全に充足するまでに予想されるインプット合計に占める割合に基づいて収益を認識します(B 18)。

 

指標の例

指標として,例えば,消費した資源,費やした労働時間,発生したコスト,経過期間,機械使用時間などがあります(B 18)。

 

選択の留意点

インプット法は,企業のインプットと財又はサービスの顧客への移転との間に直接的な関係がないため,約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を忠実に描写しないことが少なくありません(B 19)。他方で,アウトプット法の適用に過大なコストがかかり,インプット法が低コストで合理的な代用数値を提供することもあります(B 17,BC 164)。

そこで,企業は,インプット法の適用にあたって,約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を適切に描写するよう,適用の留意点に十分に配慮することによって,インプット法を選択することが適切な場合があります。

 

適用の留意点

企業は,インプットのうち,約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を忠実に描写しないものの影響を除外しなければなりません。

コストに基づくインプット法を使用するにあたって,次のような状況では,進捗度の測定値を修正する必要があります(B 19)。

a 発生したコストが履行義務の充足における企業の進捗度に寄与しない場合

企業は,契約の価格に反映されていない企業の履行における重大な非効率に起因して生じたコスト(例えば,予想外の金額の原材料,労働力又は他の資源の仕損のコスト)を除外しなければならなりません(B 19(a),BC 176~178)。

また,顧客へのサービスの移転を描写しない契約のセットアップ等の管理作業の活動コストを除外しなければなりません(B 51)。

b 発生したコストが履行義務の充足における企業の進捗度に比例しない場合

発生したコストが履行義務の充足における企業の進捗度に比例しない状況では,インプット法を修正し,発生したコストの範囲でのみ収益を認識すべき場合があります(B 19(b))。

例えば,エレベーターの据付けを含むリフォーム工事契約において,現場に納入されたエレベーターを事後に据え付けるケースでは(IE 95),企業が財とサービスの両方を顧客に移転することを約束していますが,顧客が当該履行義務の重要部分である財(エレベーター)に対する支配を,サービス(据付け)に対する支配とは異なる時点で獲得するときは,発生したコストが履行義務の充足における企業の進捗度に比例しません(BC 169)。

本基準は,代表的なケースから,未据付資材の会計処理と呼んで,設例(IE 95)で解説しています。

【インプット法の修正】(未据付資材の会計処理)

企業は,契約開始時に,以下の条件のすべてが満たされると見込んでいる場合は,履行義務の充足に使用される財のコストと同額で収益を認識すべきです(B 19(b))

ⅰ その財は別個のものではない。

ⅱ 顧客が,その財に関連するサービスを受け取るより相当前に,その財に対する支配を獲得すると見込まれる。

ⅲ 移転した財のコストが,履行義務を完全に充足するために予想される総コストに対して重大である。

ⅳ 企業がその財を第三者から調達していて,その財の設計と製造に深く関与していない(しかし,企業は本人として行動している)。

 

☞企業は,例えば,消費した資源,発生したコスト,経過期間など履行義務の充足に使用されたインプットの指標により進捗度を測定する方法(インプット法)を選択するときは,インプットの指標のうち,約束した財又はサービスに対する支配を顧客に移転する企業の履行(履行義務の充足)を忠実に描写しないものの影響を除外することに留意します。コストに基づくインプット法を使用するときは,契約の価格に反映されていない企業の履行の重大な非効率に起因して生じたコストや,顧客にサービスを移転しない契約のセットアップ等の管理作業のコストなど,履行義務の充足における企業の進捗度に寄与しないコストを除外します。また,発生したコストが履行義務の充足における企業の進捗度に比例しない状況では,インプット法を修正し,発生したコストの範囲でのみ収益を認識すべき場合があります。

 

6.合理的な進捗度の測定値

 

進捗度の適用の停止

企業は,履行義務の完全な充足に向けての進捗度を合理的に測定できる場合にのみ,一定の期間にわたり充足される履行義務についての収益を認識しなければなりません。

企業は,適切な進捗度の測定方法を適用するために必要となる信頼性のある情報が不足しており,履行義務の完全な適用に向けての進捗度を合理的に測定できない場合には,一定の期間にわたり充足される履行義務についての収益を認識してはなりません(第44項)。

 

進捗度の特殊な適用

企業は,履行義務を完全に充足した時の結果(基準値)を合理的に測定することができないが,当該履行義務の充足のために発生するコストを最終的に回収すると見込んでいる場合は,当該履行義務を完全に充足した時の結果を合理的に測定できるようになるまで,発生したコストの範囲でのみ収益を認識しなければなりません(第45項)。

 

☞企業は,履行義務の完全な適用に向けての進捗度を合理的に測定できない場合には,収益を認識しません。企業は,履行義務を完全に充足した時の結果(基準値)を合理的に測定することができないが,当該履行義務の充足のために発生するコストを最終的に回収すると見込んでいる場合は,当該履行義務を完全に充足した時の結果を合理的に測定できるようになるまで,発生したコストの範囲でのみ収益を認識します。

 

投稿者: 弁護士 片山 智裕

  • top_tel_sp.jpg
  • メールでのお問い合わせ
まずはお気軽にお問い合わせください 片山法律会計事務所 03-5570-3270 月~金 9:30~18:30 メールでのお問い合わせ
相続・事業継承プロフェッショナル