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2018.05.08更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約書」

 

本人なのか代理人なのかの検討

 

2018年5月8日初版 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 11ページ

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「本人なのか代理人なのかの検討」 目次と概要

 

1.適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」の概要

 

他の当事者(供給者)が財又はサービスを顧客(需要者)に提供する過程で,企業が当該財又はサービスの提供に関与している場合があります。

企業は,Step2「契約における履行義務を識別する」で,契約開始時に,契約における約束を識別しますが,このような場合には,企業の約束の性質を考慮し,自らの約束が,①本人として特定された財又はサービスを自ら提供する履行義務(顧客に対する約束)か,②代理人として他の当事者によって特定された財又はサービスが顧客に提供されるように手配する履行義務(他の当事者に対する約束)かを判定しなければなりません(B 34)。

特定された財又はサービスが顧客に移転される前に,当該財又はサービスを企業が支配している場合は,企業は本人であり,移転する特定された財又はサービスと交換に権利を得ると見込んでいる対価(顧客対価)の総額について収益を認識します(B 35B)。

これに対し,特定された財又はサービスが顧客に移転される前に,当該財又はサービスを企業が支配していない場合は,企業は代理人であり,他の当事者のために手配するサービスと交換に権利を得ると見込んでいる報酬・手数料(他の当事者に支払う顧客対価から控除して保持する対価の純額)について収益を認識します(B 36)。

適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」(B 34~38)は,他の当事者が顧客への財又はサービスの提供に関与している場合に,企業の約束の性質が,①本人として特定された財又はサービスを自ら提供する履行義務(顧客に対する約束)か,②代理人として他の当事者によって特定された財又はサービスが顧客に提供されるように手配する履行義務(他の当事者に対する約束)かを判定するための指針を提供しています。

 

☞企業は,他の当事者が顧客への財又はサービスの提供に関与している場合は,契約開始時に,企業の約束の性質を考慮し,特定された財又はサービスが顧客に移転される前に,当該財又はサービスを企業が支配している場合は,①本人として特定された財又はサービスを自ら提供する履行義務(顧客に対する約束)を識別し,移転する特定された財又はサービスと交換に権利を得ると見込んでいる対価(顧客対価)の総額について収益を認識し,そうでない場合は,②代理人として他の当事者によって特定された財又はサービスが顧客に提供されるように手配する履行義務(他の当事者に対する約束)を識別し,他の当事者のために手配するサービスと交換に権利を得ると見込んでいる報酬・手数料(他の当事者に支払う顧客対価から控除して保持する対価の純額)について収益を認識します。

 

2.本人なのか代理人なのかの検討とは

 

● 本人なのか代理人なのかの検討

他の当事者(供給者)が財又はサービスを顧客(需要者)に提供する過程で,企業が当該財又はサービスの提供に関与している場合は,一般に,その過程で移転する目的となる財又はサービスが,他の当事者(A)から企業(B)を介して需要家(C)に移転し,当該財又はサービスと交換に対価(顧客対価)がCからBを介してAに支払われます。

このような場合,従来の収益認識基準は,企業(B)が収益を認識すべき金額は,Cから受領した顧客対価の総額か,Aに支払う顧客対価から控除して保持する対価の純額かを決定するため,企業が本人として行動しているのか,又は他の当事者(A)の代理人として行動しているのかの判定を求めていました(BC 379)。  

本基準でも,目的となる財又はサービスの提供を受ける当事者(需要家C)を「顧客」と呼んで,企業に自らが本人なのか代理人なのかを判定することを求めています(BC 380)。

 

● 財又はサービスの支配

企業が本人であると代理人であると問わず,顧客(C)は,目的となる財又はサービス自体との間に交換(同価値性)の関係がある対価(顧客対価)を支払います。

企業(B)がいったん当該財又はサービスの支配を獲得した後にその支配を顧客に移転するときは,企業(B)が本人として当該財又はサービス自体を自ら顧客に移転するという履行義務を充足しますので,顧客対価を収益として認識することが当該履行義務の充足について権利を得る対価を忠実に描写します。

逆に,企業(B)が当該財又はサービスの支配を獲得しないときは,当該財又はサービスを顧客に移転することができず,他の当事者(A)が直接その支配を顧客に移転しますので,他の当事者(A)が顧客対価を収益として認識すべきです。企業(B)は,代理人として当該財又はサービスが顧客に提供されるように手配するという履行義務を充足しますので,その手配サービスと交換(同価値性)の関係にある対価(報酬・手数料)を収益として認識することが当該履行義務の充足について権利を得る対価を忠実に描写します。

このように,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」では,目的となる財又はサービスが顧客に移転される前に企業が当該財又はサービスの支配を獲得するか否かという問題に焦点を当てます(BC 380,385C~D)。

 

● 契約の相手方

企業(B)にとって,①特定された財又はサービスが顧客に移転される前に企業が当該財又はサービスの支配を獲得する場合は,需要者Cが“顧客”であり,企業(B)と顧客(C)との間の契約を識別し,特定された財又はサービス自体を自ら顧客に移転する履行義務を識別します。

逆に,②特定された財又はサービスが顧客に移転される前に企業が当該財又はサービスの支配を獲得しない場合は,供給者Aが“顧客”であり,他の当事者(A)と企業(B)との間の契約を識別し,特定された財又はサービスが顧客に提供されるように手配するサービスを他の当事者(A)に移転する履行義務を識別します。

このように,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」は,企業にとって契約の相手方すなわち“顧客”が需要者Cなのか,供給者Aなのかという問題にほかなりません。

適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」は,本人と代理人の履行義務が異なることに着眼し,Step2「契約における履行義務を識別する」で判定する企業の約束の性質として位置づけています(BC 380)。しかし,本人か代理人かによって契約の相手方が異なることに着眼すると,本来は,契約開始時において,Step1「顧客との契約を識別する」とStep2「契約における履行義務を識別する」を同時に,かつ,他の当事者(A)と企業(B)との間の契約と企業(B)と顧客(C)との間の契約の双方を両面的に検討すべき問題として位置づけらます。

 

☞適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」は,特定された財又はサービスが顧客に移転される前に企業が当該財又はサービスの支配を獲得するか否かという問題に焦点を当てます。また,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」は,企業にとって契約の相手方すなわち“顧客”が需要者なのか,供給者なのかという問題であり,契約開始時に,Step1「顧客との契約を識別する」とStep2「契約における履行義務を識別する」を同時に,かつ,供給者との間の契約と需要者との間の契約の双方を両面的に検討すべき問題として位置づけられます。

 

3.委託販売契約との関係

 

● 委託販売契約

委託販売契約とは,他人のために財の販売を引き受ける契約をいいます。上の模式図では,他の当事者(A)と企業(B)との間の契約が,他の当事者(A)が企業(B)に対して販売業務を委託するものであり,法律上の契約類型は,(準)委任契約(委託契約)です。

適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」(B 34~38)で,企業が自らを代理人と判定するケースには他の当事者(A)と企業(B)との間の契約が委託販売契約である場合が含まれます。

この委託販売契約自体から生じる収益は,企業(B)が認識します。委託販売契約では,受託者である企業(B)は,委託者である他の当事者(A)に対し,目的となる財(委託者の製品・商品)を販売する手配サービスを移転するので,「本人なのか代理人なのかの検討」では自らを代理人と判定し,その手配サービスと交換(同価値性)の関係にある対価(報酬・手数料)を収益として認識します。

 

● 適用指針「委託販売契約」

適用指針「委託販売契約」(B 77~78)は,委託者である供給者Aが“企業”として,いつの時点で目的となる財又はサービスの対価(顧客対価)を収益として認識すべきか,という問題を取り扱っています。

企業(A)と他の当事者(B)との間の契約は,①他の当事者(B)が支配を獲得する場合は,売買契約(独立の販売)であり,企業(A)において“顧客”である他の当事者(B)に目的となる財又はサービスの支配を移転した時点で収益を認識し(BC 385E),逆に,②他の当事者(B)が支配を獲得しない場合は,委託販売契約であり,企業(A)において他の当事者(B)を介して顧客(C)に目的となる財又はサービスの支配を移転した時点で収益を認識します(B 77)。

 

● 委託販売契約との関係

適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」において,流通業者(B)の立場から,目的となる財又はサービスが需要者(C)に移転される前に当該財又はサービスの支配を獲得するかどうかという評価を行うことと,適用指針「委託販売契約」において,供給者(A)の立場から,流通業者(B)が目的となる財又はサービスの支配を獲得するかどうかという評価を行うことは,同一の事象を異なる立場から評価しているという“裏返し”の関係にあります。

 

☞目的となる財又はサービスが需要者(C)に移転される前に,流通業者(B)が当該財又はサービスの支配を獲得するかどうかという同一の事象について,適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」で流通業者(B)の立場から評価することと,適用指針「委託販売契約」で供給者(A)の立場から評価することは“裏返し”の関係にあります。

 

4.企業の約束の性質の判定

 

● 企業の約束の性質の判定方法

企業は,次の手順で企業の約束の性質を判定します(B 34,34A)。

(a) 顧客に提供すべき特定された財又はサービスを識別する。

(b) 特定された財又はサービスのそれぞれが顧客に移転される前に,当該財又はサービスを企業が支配しているのかどうかを評価する。

 

● 特定された財又はサービスの識別

特定された財又はサービスとは,顧客に提供すべき別個の財又はサービス(財又はサービスの別個の束)をいいます(BC 381)。供給者である他の当事者が財又はサービスを需要者に提供する過程に企業が関与している場合,需要者を「顧客」と呼び,需要者に提供する目的となる財又はサービスを「特定された財又はサービス」と呼びます。

特定された財又はサービスは,例えば,他の当事者が提供する財又はサービスに対する権利である場合があります(B 34A)。

例えば,旅行代理店である企業が他の当事者(航空会社)が顧客(乗客)にフライトを提供する過程に関与している場合,特定された財又はサービスは,フライトそのものなのか,フライトの権利(航空券)なのかを検討する必要があります。企業は,将来の顧客への販売のために事前に航空券を購入している事実に着眼し,顧客に移転される前にフライトの権利の支配を獲得していれば,フライトの権利を特定された財又はサービスとして本人の履行義務を識別することになります(BC 381)。

 

● 特定された財又はサービスに対する支配の判定

企業は,特定された財又はサービスを当該財又はサービスが顧客に移転される前に支配しているときは,本人であると判定し(B 35),支配していないときは,代理人であると判定します(B 36)。

企業が特定された財の法的所有権を顧客に移転される前に瞬間的にしか獲得しない場合には,企業は必ずしもその財を支配していません(B 35)。例えば,いわゆる消化仕入と呼ばれる取引のように,他の当事者が企業の店舗内に商品を納入し,陳列後も当該商品の法的所有権を有し,当該商品が顧客に販売されたときに当該商品の法的所有権が企業を介して顧客に移転するものとされており,企業が瞬間的にしか当該商品の法的所有権を獲得しない場合は,企業は必ずしも当該商品を支配していません。

本人である企業は,顧客に移転される前に特定された財又はサービスを支配しますので,一般的な経済取引として,特定された財又はサービスを提供する履行義務を自ら充足する場合もあれば,他の当事者(例えば,外注先や下請業者)に自らに代わって履行義務の一部又は全部を充足させる場合もあります(B 35)。

企業が本人である場合は,次のいずれかに対する支配を獲得します(B 35A,BC 385U)。

(a) 当該他の当事者からの財又は他の資産で,企業がその後に顧客に移転するもの(B 35A(a))

他の当事者と企業との間に売買契約(独立の販売)を締結する場合が典型であり,特定された財又はサービスは,商品,製品などの財の場合もあれば,サービスに対する権利(が化体したチケットなどのバウチャー)の場合もあります。無形の財又はサービスであっても,顧客に移転される前に当該財又はサービスに対する権利が存在している場合には,企業はその権利を支配することできます(BC 385O~P)。

例えば,ある企業が航空会社から減額された料率で購入した航空券を顧客に販売する場合(IE 239),企業は,他の当事者(航空会社)が履行するサービス(フライト)に対する権利(航空券)として特定された財又はサービスの支配を獲得し,これを顧客に移転します。

(b) 当該他の当事者が履行するサービスに対する権利(B 35A(b))

企業が他の当事者との間で顧客に提供するサービスを履行する契約を締結する場合が典型であり,特定された財又はサービスは,顧客に提供するサービスですが,企業は,他の当事者と契約を締結して,企業に代わって顧客にサービスを提供するよう求める権利を獲得し,この権利を支配することによって特定されたサービスを支配することができます(BC 385V)。

例えば,ある企業が顧客にオフィス・メンテナンス・サービスを提供する契約を締結し,他の当事者との間で顧客のために当該サービスを履行する契約を締結する場合(IE 238A~B),企業は,他の当事者にオフィス・メンテナンス・サービスを履行するよう求める権利(当該サービスを履行するよう指図する能力)を有し,当該サービスが顧客に移転される前に当該サービスに対する支配を獲得しています。

(c) 当該他の当事者からの財又はサービスで,企業がその後に顧客に特定された財又はサービスを提供する際に他の財又はサービスと結合するもの(B 35A(c))

企業が他の当事者が提供した財又はサービスを顧客が契約している特定された財又はサービスに統合するという重要なサービス(第29項(a)参照)を提供する場合には,企業は,顧客に移転される前に特定された財又はサービスを支配しています。企業は,まず,特定された財又はサービスへのインプット(他の当事者からの財又はサービスが含まれます。)に対する支配を獲得し,結合後のアウトプット(特定された財又はサービス)を創出するためにそれらの使用を指図するからです(BC 385Q~R)。

例えば,ある企業が顧客に独特の仕様の設備を提供する契約を締結し,その仕様を開発して他の当事者に設備を製造させ,直接顧客に引き渡すよう手配する場合(IE 234),企業は,仕様の開発と設備の製造を統合するという重要なサービスを提供しており,当該設備に対する支配を他の当事者から獲得し,独特の仕様の設備という特定された財又はサービスを創出するためにその使用を指図しますので,顧客に移転される前に特定された財又はサービスに対する支配を獲得しています。

 

☞企業は,(1)顧客に提供すべき特定された財又はサービスを識別し,(2)特定された財又はサービスが顧客に移転される前に,企業が当該特定された財又はサービスを支配しているかどうかを判定します。本人である企業は,①他の当事者からの財又は他の資産で,その後に顧客に移転するもの,②他の当事者が履行するサービスに対する権利,③他の当事者からの財又はサービスで,その後に顧客に特定された財又はサービスを提供する際に他の財又はサービスと結合するもの,のいずれかに対する支配を獲得します。

 

5.特定された財又はサービスに対する支配の指標(本人の指標)

 

適用指針「本人なのか代理人なのかの検討」は,企業が特定された財又はサービスを当該財又はサービスが顧客に移転される前に支配しているかどうかの判定が容易でない場合もあることから,以下のとおり,特定された財又はサービスを支配していること(企業が本人であること)を示す指標を例示し,これらの指標を考慮して総合的に判定するものとしています(B 37,BC 382,385H)。

(a) 企業が,特定された財又はサービスを提供する約束の履行に対する主たる責任を有している(B 37(a))

この指標における履行の責任は,契約の履行のための事実行為に果たす役割を指しており,それが主たる責任か否かは,一次的に果たす役割だけでなく,最終的な責任(他の当事者が履行しない場合に自ら履行する責任)や特定された財又はサービスの受入可能性に対する責任(顧客が特定された財又はサービスを受け入れることを可能にする責任,例えば,財又はサービスが顧客の仕様を満たしていることについての責任)も含めて判断します。

この主たる責任は,必ずしも契約責任と一致するものではありませんが,特定された財又はサービスについて顧客と契約を締結している当事者が,企業自身なのか,他の当事者なのかは,重要な考慮要素であるといえます。

他方,他の当事者が顧客との間で直接契約を締結しており,企業が法律上の代理人である場合や媒介(他人間の契約の成立に向けて尽力する事実行為)を行う仲介人である場合は,企業が代理人であることは明らかです。

企業が顧客との間で直接契約を締結する場合であっても,それが特定された財又はサービスについての契約でない場合は,企業は代理人です。例えば,ある企業がウェブサイトを運営しており,それによりウェブサイトを利用する顧客は,注文する際に企業に商品の対価を預託し,他の当事者から直接商品の引渡しを受ける場合(IE 231),一般に,企業がウェブサイト上の約款等で顧客と締結する契約は,特定された財又はサービスである商品についての契約でないため,企業は代理人です。

(b) 特定された財又はサービスが顧客に移転される前,又は顧客への支配の移転の後(例えば,顧客が返品の権利を有している場合)に,企業が在庫リスクを有している(B 37(b))

企業が特定された財又はサービスを在庫として保有する可能性がある場合,企業は,当該財又はサービスが顧客に移転される前に当該財又はサービスの使用を指図する能力及び当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力を有している,すなわち本人である可能性を示しています。

企業が特定された財又はサービスについて顧客との契約を獲得する前に,他の当事者から当該財又はサービスを獲得するか,又は獲得する約束をする場合,企業が在庫リスクを有しています。また,企業が特定された財又はサービスの支配を顧客に移転した後も,顧客が返品の権利を行使したときに,企業と他の当事者との間の契約の明示的又は黙示的な合意によっては,企業が在庫リスクを負う場合があります。もっとも,いわゆる介入取引のように,他の当事者と顧客の間に主要な取引条件が実質的に決定されてから,企業がその間に介入する場合の多くは,企業は在庫リスクを負いません。

(c) 特定された財又はサービスの価格の設定において企業に裁量権がある(B 37(c))

企業が特定された財又はサービスに対して顧客が支払う価格を設定していることは,企業が当該財又はサービスから受け取ることのできる便益が限定されておらず,企業が当該財又はサービスの使用を指図し,残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力を有している,すなわち本人である可能性を示しています。もっとも,例えば,代理人が,財又はサービスが他の当事者によって顧客に提供されるように手配するというサービスから生じる追加的な収益を生み出すために,価格の設定において若干の柔軟性を有している場合など,代理人が価格の設定において裁量権を有していることもあります。

 

☞企業は,特定された財又はサービスが顧客に移転される前に,企業が当該財又はサービスを支配しているかどうかの判定にあたって,特定された財又はサービスを支配していること(企業が本人であること)を示す指標として,例えば,①企業が,特定された財又はサービスを提供する約束の履行に対する主たる責任を有していること,②特定された財又はサービスが顧客に移転される前,又は顧客への支配の移転の後(例えば,顧客が返品の権利を有している場合)に,企業が在庫リスクを有していること,③特定された財又はサービスの価格の設定において企業に裁量権があること,を考慮して総合的に判定します。

 

6.本人である企業の会計処理

 

● 履行義務の識別

企業が特定された財又はサービスを当該財又はサービスが顧客に移転される前に支配している場合には,企業は,本人として,顧客に対し,特定された財又はサービスを自ら提供する履行義務を識別します(B 35)。

 

● 収益の認識

企業は,本人の履行義務を充足する時点で(又は充足するにつれて),移転する特定された財又はサービスと交換に権利を得ると見込んでいる対価(顧客対価)の総額について収益を認識します(B 35B)。

 

7.代理人である企業の会計処理

 

● 履行義務の識別

企業が特定された財又はサービスを当該財又はサービスが顧客に移転される前に支配していない場合には,企業は,代理人として,他の当事者に対し,他の当事者によって特定された財又はサービスが顧客に提供されるように手配する履行義務を識別します(B 36)。

 

● 収益の認識

企業は,代理人の履行義務を充足する時点で(又は充足するにつれて),他の当事者によって特定された財又はサービスが顧客に提供されるように手配することと交換に権利を得ると見込んでいる報酬・手数料について収益を認識します(B 36)。

企業が権利を得ると見込んでいる対価は,他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る対価(顧客対価)を企業が当該他の当事者に支払った後に保持する対価の純額の場合もあります(B 36)。

 

☞企業は,①本人として特定された財又はサービスを自ら提供する履行義務を識別したときは,移転する特定された財又はサービスと交換に権利を得ると見込んでいる対価(顧客対価)の総額について収益を認識し,②代理人として他の当事者によって特定された財又はサービスが顧客に提供されるように手配する履行義務を識別したときは,他の当事者のために手配するサービスと交換に権利を得ると見込んでいる報酬・手数料(他の当事者に支払う顧客対価から控除して保持する対価の純額)について収益を認識します。

投稿者: 弁護士 片山 智裕

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