法律会計フォーラム

2017.10.28更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約実務」(公開草案版)

 

変動対価

 

2017年10月28日 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 10ページ

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

このページでは,その要約のみ配信しております。

NEWSLETTER9-2

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

また,事務所セミナーなどのご案内をご郵送することもあります。

 

 

「変動対価」 目次と概要

 

1.Step3「取引価格を算定する」の概要

 

企業は,契約における履行義務を識別した後の次のステップで,契約における取引開始日に,当該契約に係る取引価格を算定します。

顧客が固定額の現金対価を支払うと約束する場合は,単純にその対価から取引価格を算定できますが,本基準は,契約において約束された対価から単純に取引価格を算定できない次の4つの類型について,取引価格の算定の指針を示しています(第45項,IFRS/BC 188)。

1 変動対価

2 契約における重要な金融要素

3 現金以外の対価

4 顧客に支払われる対価

 

☞企業は,契約開始時に,契約において約束された対価から取引価格を算定します。特に4つの類型(①変動対価,②契約における重大な金融要素,③現金以外の対価,④顧客に支払われる対価)について,本基準に従って取引価格を算定します。

 

2.Step3-① 変動対価

 

Step3「取引価格を算定する」において,契約において約束された対価のうち変動する可能性のある部分が含まれる場合,企業は,財又はサービスの顧客への移転と交換に権利を得ることとなる対価の額を見積る必要があります(第47項)。

また,企業は,変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に,解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高い部分に限り,見積られた変動対価の額を取引価格に含めます(第51項)。

 

3.取引価格とは

 

“取引価格”とは

本基準は,“取引価格”を「財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし,第三者のために回収する額を除く。)」と定義づけます(第7項)。

 

配分後取引価格アプローチ

本基準は,IFRS第15号と同様に,契約に基づく収益認識の原則を採用するとともに,財又はサービスを提供する義務(負債)の測定を,取引価格を契約における各履行義務に配分して行うアプローチ(配分後取引価格アプローチ)を採用します(IFRS/BC 25,26,181,183)。

他方,契約上の義務を,企業が独立した第三者に移転すると仮定した場合にその第三者から支払を求められる対価(債務引受けの代金)の額で測定するアプローチ(現在出口価格アプローチ)も考えられます。

しかし,現在出口価格アプローチは,契約における取引開始日に,一般的に対価を受け取る権利(資産)の測定値が財又はサービスを提供する義務(負債)の測定値を上回るため,企業が約束した財又はサービスを顧客に移転する前に収益を認識してしまいます(IFRS/BC 25)。

また,現在出口価格アプローチでは,残存履行義務を各決算日現在で直接的に測定しますが,現在出口価格は,通常は観察可能ではなく,見積りが複雑でコストがかかり,検証が困難になるおそれがあります。しかも,約束した財又はサービスの価値の変動性は,本来的に小さいか,又は顧客への移転までの比較的短期間では限定的であり,財務諸表利用者に追加的な情報をほとんど提供しません(IFRS/BC 25,182)。

このような理由から,本基準は,IFRS第15号と同様に,現在出口価格アプローチを採用していません(IFRS/BC 25~27,182)。

 

取引価格の基礎となる対価

取引価格には,企業が現在の契約に基づいて権利を有している対価の額(変動する可能性のある部分を含みます。)だけを含め(IFRS/BC 186),新たな契約の成立により権利を得ることとなる対価の額を含めません。

例えば,顧客が現在の契約に含まれる追加の財又はサービスを取得するオプションを行使したときは,企業と顧客との間に独立販売価格より重要な値引きがされた価格で追加の財又はサービスを提供する新たな契約が成立しますが,新たな契約に係る対価(独立販売価格より重要な値引きがされた価格)は,現在の契約に係る取引価格に含めません(IFRS/BC 186)。

また,顧客が現在の契約から新たな取引価格に変更することが予測されるとしても,企業と顧客との間に変更契約(新たな契約)が成立するまでは,新たな契約に係る対価は,現在の契約に係る取引価格に含めません(IFRS/BC 186)。

以上のように,新たに成立する契約に係る対価は,企業は,未だ対価に対する権利を有していませんので,現在の契約に係る取引価格の算定に含めません(IFRS/BC 186)。

 

取引価格の支払者

企業が現在の契約に基づいて権利を有している対価の額は,いかなる当事者が支払ってもよく,顧客以外の当事者が支払う場合でも取引価格に含まれます。

例えば,ヘルスケア(医療介護)業界では,患者(顧客)だけでなく,保険会社あるいは政府機関から対価の支払を受ける権利を得ることとなる金額に基づいて取引価格を算定します。他の業界でも,例えば,仕入先であるメーカー(製造業者)が企業の顧客に直接クーポン又はリベートを発行するときは,企業は,顧客が使用したクーポン又はリベートに基づきメーカーから支払を受ける権利を得ることとなる金額も取引価格に含めます。

しかし,我が国における消費税などのように,企業が他の当事者に代わって回収する金額は,取引価格に含めません(IFRS/BC 187)。

 

顧客の信用リスク

取引価格には,財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が“権利を得る”と見込む対価の額を基礎とし,企業が権利を得たとしても顧客の信用リスクのために受け取れないと見込まれる対価の額も含みます。言い換えれば,取引価格は,企業が“受け取る”と見込む対価の額ではありませんので,企業が契約に従って権利を得る対価の額を顧客から回収できないというリスク(顧客の信用リスク)は取引価格に反映されません(IFRS/BC 259)。

財務諸表利用者にとって,収益を「総額」で測定する方が,企業で別々に管理されている販売機能の業績(収益の成長)と債権回収機能の業績(債権管理)を区別して評価し得る有用な情報を提供するからです(IFRS/BC 260)。

 

☞企業は,現在の契約に基づいて権利を有している対価の金額を基礎に取引価格を算定し,現在の契約と関連する新たな契約の成立により権利を得ることとなる対価の金額は取引価格に含めません。また,取引価格には,保険会社,政府機関,顧客に直接クーポン等を発行する仕入先など顧客以外の当事者が支払う場合も含めますが,消費税など企業が他の当事者に代わって回収する金額は含めません。

 

4.取引価格の算定

 

取引価格は,契約において約束された対価を基礎に算定します。

企業は,取引価格を算定するために,契約の条件や取引慣行等を考慮しなければなりません(第44項)。

契約において約束された対価の性質,時期及び金額は,取引価格の見積りに影響を与えます(第45項)。

企業は,取引価格の算定にあたって,財又はサービスが契約に従って顧客に移転され,契約の取消,更新又は変更はないものと仮定します(第46項)。

 

5.変動対価の識別

 

変動対価とは

変動対価とは,契約において約束された対価のうち変動する可能性のある部分をいいます(第47項)。

変動対価は,企業が契約に基づいて権利を得ることとなる対価が変動する可能性のあるすべての状況で生じる可能性があり(IFRS/BC 190),例えば,値引き,リベート,返金,インセンティブ,業績に基づく割増金,ペナルティー等の形態により対価の額が変動する場合や,返品権付きの販売などがあります(指針23)。

 

変動対価の識別

企業は,まず,どのような場合に変動対価が顧客との契約の中に存在するのかを識別しなければなりません(IFRS/BC 189(a))。

 

変動性にかかる条件

顧客が契約において変動性のある対価の額を算定することを約束する場合だけでなく,契約において約束された対価に対する企業の権利が将来の事象の発生又は不発生を条件としている場合にも,対価の額が変動する可能性があります(IFRS/第51項)。

条件とは,法律効力の発生又は消滅を将来の実現や到来の不確実な事実の発生(成就)にかからせることをいいます。契約において対価に対する企業の権利に条件が付されているときは,たとえ契約に明示された価格が固定されていても,変動対価に該当します。

例えば,製品が返品権付きで販売された場合,顧客が返品権を行使するという条件の成就により企業が受け取った対価を顧客に返金する義務が発生しますので,変動対価に該当します。契約に明記された価格が固定されていても,企業は,固定された価格すべてに対する権利を得るか,又は固定された価格に対する権利を全く得ないかのいずれかの可能性があり,対価が変動するからです(IFRS/BC 191)。

他方,期限とは,法律効力の発生又は消滅を将来発生することが確実な事実にかからせることをいいます。契約において対価に対する企業の権利に期限が付されていても,変動対価には該当しません。企業が約束した財又はサービスを顧客に移転した時に又はその後に,あるいは移転と引き換えに,対価に対する企業の権利が発生しても,対価の額は変動しません。

 

変動性に関する明示~価格譲歩~

顧客が約束した対価に関する変動性は,契約に明示されることが少なくありませんが,企業が契約に明示された価格よりも低い価格を受け入れる可能性がある(契約が黙示的な価格譲歩を含んでいる)ために,約束された対価に変動性があることもあります(IFRS/BC 192)。

企業は,次の状況のいずれかが存在する場合には,約束された対価に変動性があると判定します(指針24)。

a 企業の取引慣行や公表した方針等に基づき,契約の価格よりも価格が引き下げられるとの期待を顧客が有していること

例えば,企業が顧客との関係を強化して当該顧客への将来の販売を促進する目的で,過去に当該顧客に販売した商品につき当該顧客が容易に第三者に売却できるよう値引きすることを可能にするために価格を引き下げることがありますが,企業の取引慣行や公表した方針等から,企業がそのような価格の引き下げをするであろうという合理的な期待を顧客が有しているときは,約束した対価に変動性があると判定します(IFRS/BC 192)。

b 顧客との契約締結時に,価格を引き下げるという企業の意図が存在していること

企業の取引慣行や公表した方針等がないものの,例えば,企業が新規顧客との関係を開発する戦略のため,当該顧客と契約を締結する場合に,他の要因により,企業が契約に明示された価格よりも価格を引き下げるという意図が存在するときは,約束した対価に変動性があると判定します(IFRS/BC 193)。

 

☞企業は,顧客が契約において変動性のある対価の額を算定することを明示に約束する場合だけでなく,①約束された対価(価格が固定されている場合を含みます。)に対する企業の権利が将来の事象の発生又は不発生を条件としている場合や,②企業が契約に明示された価格よりも価格を引き下げるという顧客の期待や企業の意図がある一定の状況が存在する場合にも,変動対価を識別します。

 

6.変動対価の見積りの方法

 

変動対価の見積り

企業は,変動対価を識別したときは,適切な方法により変動対価の額を見積る必要があります(IFRS/BC 189(b))。

本基準は,変動対価の額の見積りに関し,その目的を明示し,適切な測定方法を限定しています。経営者に自由に見積りの方法を選択することを容認することは,財務諸表利用者にとっての理解可能性や企業間の比較可能性を損なうおそれがあるからです(IFRS/BC 196~198)。

 

変動対価の見積りの方法

企業は,次のいずれかの方法のうち,企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いて,変動対価の額を見積らなければなりません(第48項,第122項,IFRS/BC 195)。

a 期待値…発生し得ると考えられる対価の額を確率で加重平均した金額の合計額

期待値は,決算日現在の不確実性のすべてを反映しますので,とりわけ,企業が特性の類似した多くの契約を有している場合には,変動対価の額を適切に見積ることができます。他方で,契約において生じ得る結果が2つしかない場合などでは,期待値は,契約において生じ得ない結果(金額)を示すこともあり,必ずしも企業が権利を得ることとなる金額を忠実に予測しない場合があります(第122項,IFRS/BC 199,200)。

b 最頻値…発生し得ると考えられる対価の額における最も可能性の高い単一の金額

契約において生じ得る結果が2つしかない場合には,変動対価の額を適切に見積ることができます(第122項,IFRS/BC 200)。

 

合理性の原則

企業は,変動対価の見積りにあたって,企業が合理的に入手できるすべての情報を考慮し,発生し得ると考えられる対価の額についての合理的な数のシナリオを識別しなければなりません(第49項)。

 

一貫適用の原則

企業は,変動対価の見積りにあたって,契約全体を通じて単一の方法を首尾一貫して適用しなければなりません(第49項)。

 

☞企業は,合理的に利用可能なすべての情報を考慮し,①期待値又は②最も可能性の高い金額のうち企業が権利を得ることとなる対価の金額をより適切に予測できると見込んでいる方法を使用し,合理的な数の結果(金額)を識別して変動対価を見積ります。

 

7.変動対価の見積りの制限

 

変動対価の見積りの制限

本基準は,変動対価の見積りの不確実性が高すぎるときは,企業が顧客に移転する財又はサービスと交換に権利を得ることとなる対価を忠実に描写しないおそれがあることから,財務諸表利用者に有用な情報を提供するために,変動対価の見積りの一部又は全部を取引価格に含めないこととしています(IFRS/BC 203)。

そこで,企業は,どのような場合に,そうした変動対価を制限し,取引価格に含めるべきでないのかを判定する必要があります(IFRS/BC 189(c))。

 

目的

財務諸表利用者が企業の将来の収益をより適切に予測するためには,ある報告期間における収益の測定値が,その後の報告期間に重大な戻入れが生じないことが有用であるといえます。そこで,本基準は,変動対価の見積りの制限に関し,収益の下方修正(収益の戻入れ)を制限することに焦点を置き,計上された収益の著しい減額が発生しないことを目的としています(IFRS/BC 206,207)。

また,本基準は,変動対価の見積りの制限が,どの程度の確度で計上された収益の著しい減額が発生しないことを確保するのかという問題(確信のレベル)を実務的に統一するため,そのレベルを「非常に可能性が高い」という用語で明示しています。企業は,このレベルを確率として定量化して評価する必要はなく,定性的な諸要因を考慮します(IFRS/BC 208~212)。

 

要件~考慮すべき要素と要因~

企業は,見積られた変動対価の額について,変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に,解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高い部分に限り,取引価格に含めなければなりません(第51項)。

企業は,計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高いかどうかを評価するにあたって,収益が減額される①確率と②減額の程度の両方を考慮しなければなりません(指針25)。

 

変動対価の見積りの一部の制限

企業は,変動対価の見積りの一部を取引価格に含めたときは,計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高いと評価する場合には,変動対価の見積り全体を取引価格から除外する必要はなく,その一部を取引価格に含めるべきです(IFRS/BC 218)。

ただし,知的財産のライセンスとの交換で約束された売上高又は使用量に基づくロイヤルティの形態の対価については,適用指針(指針67)を適用して会計処理しますので,企業は,不確実性が解消される(顧客に売上又は使用が生じる)までは,収益を認識してはなりません(IFRS/BC 219)。

 

☞企業は,変動対価に関する不確実性がその後に解消される際に,認識した収益の累計額の重大な戻入れが生じない可能性が非常に高いといえない場合は,見積られた変動対価の金額の一部又は全部を制限し,取引価格に含めません。

 

8.取引価格の事後の変動

 

取引価格の事後の変動

本基準は,各決算日現在で存在している状況及び報告期間中の状況の変化を描写するため,企業が契約期間全体を通じて取引価格の見積りを見直すものとし(IFRS/BC 224),取引価格の事後の変動の会計処理を定めています(IFRS/BC 189(d))。

 

変動対価の再判定

企業は,各決算日において,各決算日現在で存在している状況及び報告期間中の状況の変化を忠実に反映するために,変動対価の見積りが制限されるかどうかの評価も含め,見積った取引価格を見直さなければなりません。企業は,見直した取引価格について,Step4「取引価格を契約における履行義務に配分する」で,取引価格の変動の会計処理(第71項~第73項)を行います(第52項)。

 

☞企業は,契約における取引開始日に見積った変動対価について,契約期間全体を通じ,各決算日に取引価格を見直し,取引価格の変動の会計処理(第71項~第73項)を行います。

投稿者: 弁護士 片山 智裕

2017.10.19更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約実務」(公開草案版)

 

履行義務の識別

 

2017年10月19日 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 5ページ

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

このページでは,その要約のみ配信しております。

NEWSLETTER8-2 

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

また,事務所セミナーなどのご案内をご郵送することもあります。

 

「履行義務の識別」 目次と概要

 

1.Step2-③ 履行義務の識別 

 

Step2「契約における履行義務を識別する」では,契約における約束を漏れなく識別した後(Step2-①契約における約束の識別),別個の財又はサービス(の束)に区切り,又は束ねて識別します(Step2-②別個の財又はサービスの識別)。そして,最後に,企業は,識別した別個の財又はサービス(の束)から,区分して会計処理をする単位として履行義務を識別します(第29項)。

本基準は,“別個の財又はサービス”という概念では,反復的なサービス契約などで費用対効果が低い多数の会計単位を識別してしまうという運用上の問題を解決するため,特性が実質的に同じであり,顧客への移転のパターンが同じである一連の別個の財又はサービスについて,単一の履行義務を識別するものとしています(第29項(2))。

そのほかは,別個の財又はサービス(の束)のそれぞれを履行義務として識別します(第29項(1))。 

 

☞企業は,識別した別個の財又はサービス(の束)のうち特性が実質的に同じであり,顧客への移転のパターンが同じである一連の別個の財又はサービスに単一の履行義務を識別しますが,それ以外は,別個の財又はサービス(の束)のそれぞれを履行義務として識別します。 

 

2.履行義務とは

 

履行義務の定義

本基準は,“履行義務”を,次にように定義しています(第6項)。

顧客との契約において,次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束

(1) 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)

(2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり,顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)

 

履行義務の識別の目的

本基準は,基本となる原則として“約束した財又はサービスの顧客への移転を,当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように,収益の認識を行う”という原理を採用しています(第13項)。

本基準は,この原理を実現するため“履行義務”という会計単位を用いています。履行義務は,企業が契約において約束した財又はサービスに関する会計単位をいい,企業が負う財又はサービスを提供する義務を一つ又は複数に区分して識別したものです。この会計単位に当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込んでいる対価(取引価格)を配分することにより(配分後取引価格アプローチ),財又はサービスが顧客に移転するごとに(又は移転するにつれて)その会計単位に配分されている対価を収益として認識します。

履行義務の識別は,契約において約束した財又はサービスを顧客に移転するという企業の履行を忠実に描写するために意味のある会計単位を適切に識別することを確保することを目的としています(IFRS/BC 85)。 

 

☞企業は,契約において約束した財又はサービスを顧客に移転するという企業の履行を忠実に描写するために意味のある会計単位として履行義務を適切に識別しなければなりません。 

 

3.履行義務の識別 

 

履行義務の識別

履行義務は,顧客との契約において,(1) 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)又は(2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり,顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)のいずれかを移転する約束をいいますが,本基準は,このうち(2)の顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービスと判定するための要件を定立し(第30項),この要件を満たす一連の別個の財又はサービスについて単一の履行義務を識別することを求めています。

この要件を満たさない場合は,Step2-②別個の財又はサービスの識別のサブ・ステップで識別した別個の財又はサービス(の束)のそれぞれを履行義務として識別します。

 

別個の財又はサービスとの関係

本基準は,契約変更及び変動対価の配分における判定にあたって,財又はサービスを提供する義務に関する会計単位を用いますが,特性が実質的に同じであり,顧客への移転のパターンが同じである一連の別個の財又はサービスに単一の履行義務を識別しているときは,その目的上,“履行義務”という会計単位ではなく,“別個の財又はサービス”という会計単位を用いることに留意する必要があります(IFRS/BC 115)。 

 

☞企業は,識別した別個の財又はサービス(の束)について,一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同一であり,顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)の要件を満たすときは,単一の履行義務を識別し,その要件を満たさないときは,それぞれの別個の財又はサービス(の束)を履行義務として識別します。

 

4.一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同一であり,顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス) 

 

概要

企業は,反復的なサービス契約(例えば,清掃契約や取引処理,電力を供給する契約)などで,特性が実質的に同じ財又はサービスを一定の期間にわたり連続的に提供する状況では,もし,第29項(2)の一連の別個の財又はサービスを履行義務の定義に含めなければ,契約において提供すべき個々のサービスごとに複数の別個の財又はサービスを識別し,全体の対価(取引価格)を独立販売価格に基づいてそれぞれの増分(例えば,清掃の1時間ごと)に配分することが要求されることになりますが,収益認識モデルをこのような方法で適用することは,費用対効果が低いと考えられます。

そこで,本基準は,このような運用上の問題を解決し,収益認識モデルを単純化して,コストを軽減するため,第29項(2)の一連の別個の財又はサービスを履行義務の定義に含めることによって,履行義務の識別における首尾一貫性を高めています(IFRS/BC 113,114)

 

要件

企業は,以下の要件のすべてに該当するときは,一連の別個の財又はサービスに単一の履行義務を識別しなければなりません(第29項(2))。

● 複数の別個の財又はサービスの特性が実質的に同じであること

複数の別個の財又はサービスがほぼ同一(同種)であること。

● 別個の財又はサービスの顧客への移転のパターンが同じであること

次のa及びbの要件のいずれも満たす場合には,別個の財又はサービスの顧客への移転のパターンが同じであると評価します(第30項)。

a 一連の別個の財又はサービスのそれぞれが,第35項における一定の期間にわたり充足される履行義務の要件を満たすこと

b 第38項及び第39項に従って,履行義務の充足に係る進捗度の見積りに,同一の方法が使用されること

企業が,別個の財又はサービスのそれぞれについて,一定の期間にわたり充足される履行義務の充足に係る進捗度の見積りに同一の方法を使用することが,本基準第38項・第39項に従って適切でなければなりません。

 

類似した状況における適用

第29項(2)の一連の別個の財又はサービスは,一定の期間にわたり充足される履行義務であり(IFRS/BC 113),企業は,識別した単一の履行義務に取引価格を配分し,単一の進捗度の測定値を適用することになります。

他方,複数の数量の同種の財又はサービスを同時に提供するときのように,特性が実質的に同じであり,顧客への移転のパターンが同じである複数の別個の財又はサービスが一時点で充足される履行義務であるときは,第29項(2)の要件を満たしませんので,別個の財又はサービスに同じ一時点で充足される複数の履行義務を識別して会計処理することになります。

このような顧客に同時に移転する複数の別個の財又はサービスについて,一時点で充足される履行義務をそれぞれ識別して会計処理した結果と同じであれば,本基準は,企業がそれらを単一の履行義務であるかのように,まとめて会計処理することを禁止しているわけではありません(IFRS/BC 116)。

 

☞企業は,複数の別個の財又はサービス(の束)について,①別個の財又はサービスの特性が実質的に同一(同種)であり,②いずれも一定の期間にわたり充足される履行義務の要件を満たし,かつ,③それらの履行義務の充足に係る進捗度の見積りに同一の方法を使用することが適切であるときは,単一の履行義務を識別します。

投稿者: 弁護士 片山 智裕

2017.10.08更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約実務」(公開草案版)

 

別個の財又はサービスの識別

 

2017年10月8日 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 9ページ

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

このページでは,その要約のみ配信しております。

NEWSLETTER7-2 

ニュースレターのお申込み(無料)はこちらよりお願いいたします。PDFファイルにてメール送信いたします。

お申込みいただいた方には,過去の連載分と今後配信するニュースレターもメール送信いたします。

また,事務所セミナーなどのご案内をご郵送することもあります。

 

 

「別個の財又はサービスの識別」 目次と概要

 

 

1.Step2-② 別個の財又はサービスの識別


Step2「契約における履行義務を識別する」では,契約における約束を漏れなく識別した後,別個の財又はサービス(の束)に区切り,又は束ねて識別します。“別個の財又はサービス”という概念は,次のaとbの特性をいずれも備える会計単位です(第31項)。

a 当該財又はサービスから単独で,あるいは顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて,顧客が便益を享受することができること

個々の財又はサービスが,最低限,顧客に便益を提供し得る,すなわち別個のものとなり得るという特性を備えていなければならず,それ以上に細分化した会計単位を設定してはなりません(第31項(1))。

b 当該財又はサービスを顧客に移転する約束が,契約に含まれる他の約束と区分して識別できること

たとえ個々の財又はサービスが別個のものとなり得るとしても,分離不能なリスクがあるために契約における約束として他と区分して識別できない複数の財又はサービス(の束)は,それ以上分離せずに会計単位を設定しなければなりません(第31項(2))。

 

☞企業は,識別した契約における約束を,①最低限,顧客に便益を提供し得る単位より細分化しない,②契約における約束として他と区分して識別し得る単位より分離しない,という2つのルールに従い,別個の財又はサービス(の束)に区切り,又は束ねて識別します。

 

2.契約における約束の目的となる財又はサービス

 

契約における約束の類型とその目的となる財又はサービス

財又はサービスは,企業において将来の経済的便益の流入を期待し,かつ,支配ができる資源,すなわち資産です。サービスは,有体物ではありませんが,たとえ一瞬だけであっても,企業が受け取って使用する時点では資産です(第118項)。 

本基準は,Step2「契約における履行義務を識別する」で,財又はサービスそのものではなく,まず,契約において財又はサービスを顧客に移転する約束(契約における約束)を識別するものとしています。例えば,企業が顧客に塗装サービスを提供する契約では,塗装に用いられるであろう下塗材,塗料その他の財も顧客に移転しますが,このような契約に明示的に約束されたもの以外の個々の財又はサービスまで網羅的に識別することは,履行義務を識別する目的にとっては必要がなく,無駄な事務負担となります。

そこで,企業は,Step2-①契約における約束の識別のサブ・ステップで,契約における約束を漏れなく識別した後に,Step2-②別個の財又はサービスの識別のサブ・ステップでは,契約における約束の目的となっている財又はサービスに着眼し,別個の財又はサービス(の束)に区切り,又は束ねて識別します。 

本基準は,企業が約束した財又はサービスを識別するのに役立てるため,本基準第116項で,企業が識別すべき契約における約束の類型とその目的となる財又はサービスを例示しています(IFRS/BC 91)。

 

待機する又は利用可能にするサービス(IFRS/BC 91(a))

企業は,契約における約束の目的となる財又はサービスの性質及び企業の履行の性質を考慮しなければなりません。例えば,典型的なヘルスクラブ契約では,顧客は,ヘルスクラブの利用回数に関係なく(ヘルスクラブを全く利用しなくとも),期間に応じた一定の対価を支払う義務を負います。このような場合には,サービスの内容は,顧客が要求する一時点でヘルスクラブの利用を提供することではなく,一定の期間にわたりヘルスクラブを利用可能にして待機するサービスです(IFRS/BC 160)。 

 

将来において提供される財又はサービスに対する権利の付与(IFRS/BC 91(b))

顧客又は第三者が,将来,一定の条件が成就したときに,企業に対し,財又はサービスを提供することを強制することができる場合,企業が顧客又は第三者に将来において提供される財又はサービスに対する権利を付与しているといえます。例えば,メーカーが顧客(販売業者)に財を販売するにあたって,販売業者の顧客(エンドユーザー)に追加のサービス(メンテナンスなどのアフターサービス)を提供することを約束することがあります。このような将来において提供される財又はサービスに対する権利の付与も企業にとっての履行義務を生じさせます(IFRS/BC 92)。 

 

顧客に財又はサービスを移転しない活動

企業は,契約を履行するために独立の活動を行うことが必要であっても,それにより財又はサービスが顧客に移転しない活動を履行義務として識別してはなりません。例えば,多くのサービス契約では,サービスを提供する企業が契約をセットアップするために多額の費用を要する種々の契約管理活動を行うことがありますが,当該活動によりサービスが顧客に移転しませんので,そのような活動は履行義務ではありません(指針4,IFRS/BC 93)。 

 

☞企業は,別個の財又はサービスを識別するため,契約における約束の目的となる財又はサービスに着眼します。 

 

3.別個の財又はサービスの原則

 

別個の財又はサービスの原則

履行義務は,一方では,最低限,個々の財又はサービスが顧客に便益を提供し得る,すなわち別個となり得るという特性を備えていなければなりません。この特性を備えないものは,財又はサービス(資産)かどうか疑念が生じ,それを区分して会計処理すれば,財務諸表利用者にとって目的適合性のない情報となるおそれがあるからです(IFRS/BC 97)。 

他方で,財又はサービスを顧客に移転するという企業の約束は,契約における約束として他と区分して識別できるという特性を備えていなければなりません(IFRS/BC 94,102)。この特性を備えないものに区分して会計処理すれば,企業が顧客との契約における約束を履行することを忠実に描写しない情報となるおそれがあるからです。例えば,建設型又は製造型の契約では,別個となり得る多くの財又はサービス(さまざまな資材,労働力及びプロジェクト管理サービス)を顧客に移転しますが,異なる時期に移転される別個となり得る財又はサービスをすべて区分して会計処理することは,多くの契約にとって実務的ではなく,当該契約における企業の履行の忠実な描写にならないおそれがあります。 

そこで,本基準は,企業が,約束した財又はサービスを,顧客への移転を忠実に描写する収益認識のパターンとなる方法で実務的に区分するため,“別個の財又はサービス”という概念を採用しています(IFRS/BC 94,95)。

 

別個の財又はサービスの概念

本基準は,「別個のものである(distinct)」という用語の意味(通常の意味では,異なった,区分された,あるいは類似していないものを示します。)を明確化し,次の要件の両方を満たす場合に“別個のもの”と判定するものとしています(第31項,IFRS/BC 95,96)。 

a 個々の財又はサービスの特性(第31項(a))

当該財又はサービスから単独で,あるいは顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて,顧客が便益を享受することができること。すなわち,当該財又はサービスが別個のものとなり得ること。

b 契約における約束の区分(第31項(b)) 

当該財又はサービスを顧客に移転する約束が,契約に含まれる他の約束と区分して識別できること。すなわち,当該財又はサービスが契約の観点において別個のものであること。

 

☞企業は,契約における約束の目的となる財又はサービスが,①個々の財又はサービスの特性と②契約における約束の区分に関する両方の要件を満たすときは“別個のもの”として区分することにより,また,いずれかの要件を満たさないときは束ねることにより,別個の財又はサービス(の束)を識別します。

 

4.個々の財又はサービスの特性

 

概要

顧客に約束している財又はサービスは,最低限,個々の財又はサービスが顧客に便益を提供し得る,すなわち別個のものとなり得るという特性を備えていなければならず,それ以上に細分化した会計単位を設定してはなりません。

 

要件

当該財又はサービスから単独で,あるいは顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて,顧客が便益を享受することができること(第31項(1))

 

要素

顧客がその財又はサービスから便益を得ることができること

顧客が,①財又はサービスを使用,消費,あるいは廃棄における回収額より高い金額による売却ができる場合,又は②経済的便益を生じさせるその他の方法による財又はサービスの保有ができる場合には,顧客がその財又はサービスから便益を享受することができます(指針5)。

当該財又はサービスから単独で,あるいは顧客が容易に利用できる他の資源と組み合わせて,便益を享受することができること

容易に利用できる資源とは,企業又は他の企業が独立して販売する財又はサービス,あるいは,顧客が企業からすでに獲得した資源(企業が契約に基づきすでに顧客に提供している財又はサービスを含みます。),若しくは他の取引又は事象からすでに獲得した資源をいいます(第117項)。

顧客が当該財又はサービスから便益を享受することができるかどうかは,顧客が当該財又はサービスを使用する可能性のある方法ではなく,当該財又はサービスそのものの特性を基礎として評価します。したがって,顧客が企業以外の源泉から容易に利用できる資源を獲得することを妨げる契約上の制限をすべて無視して評価します(IFRS/BC 100)。

 

指標

企業が特定の財又はサービスを通常は独立に販売するという事実により,顧客が当該財又はサービスから単独で,あるいは顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて便益を享受することが示される可能性があります(第117項)。

 

☞企業は,契約における約束の目的となる財又はサービスが,顧客が当該財又はサービスから単独で,あるいは顧客が容易に利用できる他の資源と組み合わせて便益を享受することができるものでないときは,他の財又はサービスと束ねない限り,別個の財又はサービスとして識別できません。

 

5.契約における約束の区分

 

概要

個々の財又はサービスが別個のものとなり得る(第31項(1)の要件を満たす)としても,当該契約において約束された財又はサービスを顧客に移転するという企業の履行を忠実に描写するため,契約における約束として他と区分して識別できない単一の企業の履行により移転する複数の財又はサービス(の束)は,分離せずに会計単位を設定しなければなりません。

 

要件

当該財又はサービスを顧客に移転する約束が,契約に含まれる他の約束と区分して識別できること(第31項(2))

 

分離可能なリスク

本基準は,IFRS第15号と同様に,財又はサービスを顧客に移転するという企業の約束が,契約の中の他の約束と区分して識別可能かどうかの評価の基礎として“分離可能なリスク”の概念を用いています。この概念は,「束の中の個々の財又はサービスは,それらの約束した財又はサービスのうちの1つを顧客に移転する義務を履行するために企業が引き受けるリスクが,その束の中の他の約束した財又はサービスの移転から分離不能なリスクである場合には,別個のものではない」と評価することに役立ちます。分離不能なリスクがあるために別個のものではないと評価するときは,多くの場合,別個のものとなり得る財又はサービスが,企業が契約における約束を履行する過程において結合又は改変されるために,それらの財又はサービスの単純な合計よりも価値の大きい(又は実質的に異なる)複合された財又はサービスの別個の束を移転することを企業が約束している状況を示しています。

本基準は,“分離可能なリスク”という基本原則に基づき,指針6(1)~(3)の補助的諸要因を掲げ,特定の契約又は業界への適用可能性を高めています(IFRS/BC 103~106)。

 

指標

財又はサービスを顧客に移転するという企業の約束が,契約に含まれる他の約束と区分して識別できないことを示す要因には,例えば,次のものが含まれますが,これらに限定されません(指針6)。また,これらの諸要因は相互に排他的なものではなく,複数の要因が該当する場合もあります(IFRS/BC 106)。

 

当該財又はサービスをインプットとして使用し,契約において約束している他の財又はサービスとともに,顧客が契約した結合後のアウトプットである財又はサービスの束に統合するという重要なサービスを提供していること(指針6(1))

主に建設業界において,企業が重要な統合サービス(例えば,さまざまな建設作業の管理と調整)を提供する状況では,顧客に対する企業の約束の相当部分が,個々の財又はサービス(例えば,協力業者が行う作業)が契約の目的とされた結合後のアウトプット(例えば,建設)に組み込まれること(例えば,建設の設計・仕様に従って行われること)を確保することにあり,個々の財又はサービスは,単一のアウトプットの製造・引き渡しのためのインプットにすぎず,それらの移転のリスク(例えば,作業の統合に関連したリスク)は分離不能です(IFRS/BC 107)。

 

当該財又はサービスの一つ又は複数が,契約において約束している他の財又はサービスの一つ又は複数を著しく修正する又は顧客仕様のものとするか,あるいは他の財又はサービスによって著しく修正される又は顧客仕様のものにされること(指針6(2))

主にソフトウェア業界において,ある財又はサービス(例えば,システム統合サービス)が契約の中の他の財又はサービス(例えば,既存のソフトウェア)を大幅に改変又はカスタマイズする場合は,それぞれの財又はサービスは,契約の目的とされた結合後のアウトプット(例えば,システム統合)を作り出すために一緒に集められているインプットにすぎず,それらの移転のリスク(例えば,システム統合に関連したリスク)は分離不能です(IFRS/BC 109,110)。

 

当該財又はサービスの相互依存性又は相互関連性が高く,当該財又はサービスのそれぞれが,契約において約束している他の財又はサービスへの一つ又は複数により著しく影響を受けること(指針6(3))

この要因は,企業が重要な統合サービスを提供しているのかどうか(指針6(1))や,財又はサービスが著しく修正され又は顧客仕様にされているかどうか(指針6(2))が不明確な場合に,個々の財又はサービスが契約に含まれる他の財又はサービスと区分して識別できない場合を判定するためのものです(指針109,IFRS/BC 111)。この要因には,例えば,企業が当該財又はサービスのそれぞれを独立して移転することにより約束を履行することができないために,複数の財又はサービスが相互に著しい影響を受ける場合があります(指針109)。

それぞれの財又はサービスの相互依存性や相互関連性のレベルを考慮するにあたって,契約履行のプロセスの観点から,契約に含まれるさまざまな財又はサービスの相互間に変化が生じるかどうかを考慮する必要があります。ある財又はサービスが機能において他の財又はサービスに依存していたとしても,それぞれの財又はサービスを移転する約束を互いに独立に履行できる場合には,それらの財又はサービスは別個のものです。

ある財又はサービスが契約に含まれる他の財又はサービスへの相互依存性又は相互関連性が高いために,顧客が契約に含まれる他の財又はサービスに重大な影響を与えずに,ある財又はサービスを購入するかどうかの選択ができない場合は,それぞれの財又はサービスは,契約の目的とされた結合後のアウトプットを作り出すために一緒に集められているインプットにすぎず,それらの移転のリスクは分離不能です。

 

☞企業は,たとえ個々の財又はサービスが別個のものとなり得るとしても,分離不能なリスクがあるために契約に含まれる他の約束と区分して識別できない複数の財又はサービスは,契約における約束として束ねない限り,別個の財又はサービスとして識別できません。 

投稿者: 弁護士 片山 智裕

  • top_tel_sp.jpg
  • メールでのお問い合わせ
まずはお気軽にお問い合わせください 片山法律会計事務所 03-5570-3270 月~金 9:30~18:30 メールでのお問い合わせ
片山法律会計事務所