法律会計フォーラム

2016.03.21更新

2016年3月21日号(「公正な価格」を考える3号)
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕

株式の価値と種類
 実務上,株式の取引や組織再編にあたって,「価格」の交渉・決定の参考とするために,公認会計士等の専門家による株式の「価値」の算定が行われていますが,これは「価格」と「価値」には一定の関係があることを前提としています。
 もっとも,「価値」には,様々な価値概念と種類があり(いわゆる“一物多価”),どの価値概念と種類が価格にどのように関係するかを考える必要があります。
 代表的な価値概念と種類は,以下の表のとおりです。価値概念の中では,「継続価値」と「清算価値」が広く知られていますが,「価格」との関係を考察するときは,「売り手にとっての価値」と「買い手にとっての価値」に着眼します。これら価値概念は併存し得ますので,例えば,買い手にとってコントロール・プレミアムを上乗せして非流動性ディスカウントをした継続価値,という価値を算定することができます。

 

価値の概念と種類

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者: 弁護士 片山 智裕

2016.03.11更新

2016年3月11日号(「公正な価格」を考える2号)
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕

1 「公正な価格」の用語の使われ方
  「公正な価格」は,会社法の条文で使われている法律用語です。主に組織再編の局面で株式買取制度や株式価格決定申立制度を定める会社法116条,182条の4,469条,785条,797条,806条で「公正な価格」という用語が用いられています。そのほか,会社法は,株式会社又は指定買取人による譲渡等承認請求者からの買取り(同法144条)などの局面でも同様に株式価格決定申立制度などを設けていますが,「売買価格」や「価格」という用語が用いられています(同法172条,177条,179条の8,193条)。この法文の表現の違いに意味があるかについては後に述べるとして,ここで着眼していただきたいのは,「公正な価格」は「価格」であって,「価値」ではないということです。それでは,「価格」と「価値」は,どこが違うのでしょうか?
2 「価格」と「価値」
 日本公認会計士協会編「企業価値ガイドライン(改訂版)」(日本公認会計士協会出版局/2013年・6頁)では,株式の「価格」と「価値」を次のように定義しています。
 「価格」…売り手と買い手の間で決定された値段
 「価値」…評価対象会社から創出される経済的便益
 取引や評価の対象は,必ずしも会社だけではなく,事業や経営資源でも構いませんが,「価格」は,当事者間における売買取引の成立を前提としており,売り手と買い手の間で実際に合意に至った値段(取引上の価格)を指します。そのため,価格は,実際の売り手と買い手を観念(想定)することが不可欠の要素となります。これに対し,「価値」は,売買取引がなくとも,評価対象がある限り,評価することができます。「価値」は,評価の目的や当事者のいずれの立場かなどによって複数成立します(いわゆる“一物多価”)。例えば,同一の企業や事業,経営資源を対象としても,継続価値と清算価値の二種類が成立します。
3 適正な価格
 ところで,会社法が設ける株式価格決定申立制度では,当事者間で協議が調わないときに,裁判所に価格決定の申立てをし,裁判所が「公正な価格」を決定します。したがって,「公正な価格」は,実際に売り手と買い手との間で合意に至っていないため,厳密には「価格」ではなく,実際の売り手と買い手との間で合意に至るべき値段(適正な価格)を意味しています。このような適正な価格も広義において「価格」と呼んでもよいでしょう。

 

投稿者: 弁護士 片山 智裕

2016.03.01更新

2016年3月1日号(「公正な価格」を考える1号)
弁護士・公認会計士 片 山 智 裕

はじめに
 企業の法務や財務を担当する方の中には,組織再編をしたり,非上場株式を譲渡したりするときに,公認会計士等の専門家に株価算定を求めたという経験がある方も少なくないと思います。しかし,「どうして専門家に株価算定を求めるのでしょうか?」と問われると,答えに窮し,疑問に直面することになるかも知れません。企業の担当者は,組織再編や株式譲渡にあたって,単に取引の相手方と株式の価格を交渉し,合意すればよいというものではなく,株式買取請求権などの会社法の手続や,適正な価格でないときの課税上の取り扱いなど税務面にも配慮しなければならず,株式の価格をめぐる問題は決して単純ではありません。
 また,こうした分野に経験のある企業の担当者は「公正な価格」という言葉を耳にしたことがあると思います。近時では,組織再編の分野で株式の「公正な価格」が問題とされ,レックスホールディングス事件(平成21年5月29日),TBS事件(平成23年4月19日),テクモ事件(平成24年2月29日)などの最高裁判例が集積し,「公正な価格」の判断枠組みが明らかになりつつあります。直近では,非上場株式の「公正な価格」の評価にあたっていわゆる非流動性ディスカウント(株式に市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできないとする平成27年3月26日付け最高裁決定が出ています。しかし,これらの決定理由の中には「シナジー」,「プレミアム」,「非流動性ディスカウント」などの用語や様々な表現が飛び交い,株式の価格や価値について,全体を通した体系的,統一的な説明がありませんので,多くの実務家や企業の担当者から分かりづらいと言う声をよく聴きます。
 弁護士片山のブログでは,著書やセミナーにおける皆様からの反響や質問をフィードバックし,“「公正な価格」を考える”というテーマを連載し,そもそも株式の「価格」と「価値」はどのような関係にあるかや,会社法や税法との関係で「公正な価格」の位置づけを考察し,「公正な価格」の基本的な考え方と判断枠組みを解説していきます。

投稿者: 弁護士 片山 智裕

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