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2017.09.13更新

連載「新しい収益認識基準で変わる契約書」

 

現金以外の対価と顧客に支払われる対価

 

2017年9月13日初版 弁護士・公認会計士 片山智裕

A4小冊子 7ページ

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「現金以外の対価と顧客に支払われる対価」 目次と概要

 

1.Step3-③ 現金以外の対価

 

Step3「取引価格を算定する」において,顧客が契約において現金以外の形態の対価を約束している場合は,企業は,その現金以外の対価(又は現金以外の対価の約束)を公正価値で測定する必要があります(第66項)。

 

2.現金以外の対価の測定

 

現金以外の対価の公正価値

企業は,財又はサービスと交換に顧客から現金を受け取る場合,流入する資産の価値すなわち受け取る現金の額で取引価格を測定しますので,これと整合させるため,企業が財又はサービスと交換に顧客から現金以外の形態の対価(財又はサービスの形態のほか,金融商品や有形固定資産の形態の場合もあります。)を受け取る場合も,流入する資産の価値すなわち現金以外の対価の公正価値で取引価格を測定すべきです(BC 248)。

 

現金以外の対価の公正価値を合理的に見積れない場合

企業が現金以外の対価の公正価値を合理的に見積れない場合には,企業は,当該対価の測定を,当該対価との交換で顧客(又は顧客階層)に約束した財又はサービスの独立販売価格を参照して間接的に行わなければなりません(第67項)。

例えば,IFRS第2号「株式に基づく報酬」で,企業は,受け取った財又はサービスの公正価値を信頼性をもって見積れない場合には,付与した資本性金融商品の公正価値を参照してそれらを間接的に測定することとしています。このように,受け取る資産と交換に引き渡す資産の公正価値の方が高い信頼性をもって見積ることができる場合は,その公正価値を参照して間接的に測定することは,他の会計基準と整合的であるといえます(BC 249)。

 

☞企業は,顧客が現金以外の形態の対価を約束している場合,その現金以外の対価の公正価値を取引価格として測定する必要があります。もし,現金以外の対価の公正価値を合理的に見積れない場合には,企業は,当該対価と交換に顧客(又は顧客階層)に約束した財又はサービスの独立販売価格を参照して間接的に現金以外の対価を測定します。

 

3.変動対価の見積りの制限の適用

 

現金以外の対価の変動性

現金以外の対価の公正価値の見積りは,企業が現金で受け取る変動対価と同様に変動する可能性がありますが,その変動性には,次の両方があります(BC 250,251)。

● 将来の事象の発生又は不発生によって変動する可能性

 現金以外の対価の受け取りに条件が付されている場合(例えば,業績ボーナスとして株式を受け取る企業の権利が将来の事象の発生又は不発生に左右される場合)。

● 現金以外の対価自体の価格又は価値の変動

 現金以外の対価自体の価格又は価値が変動する場合(例えば,対価である株式の1株当たりの価格が変動する場合)。

 

変動対価の見積りの制限の適用

企業は,顧客が約束した現金以外の対価の公正価値が変動する理由が対価の形態(対価自体の価格又は価値の変動)によるものだけでない場合(例えば,公正価値が企業の履行によって変動する可能性がある場合)には,変動対価の見積りの制限に関する本基準第56項~第58項を適用しなければなりません(第68項)。

変動対価の見積りの制限に関する規律(本基準第56項~第58項)は,受け取る対価の形態が現金かそれ以外かにかかわらず,企業の履行に関連する同種の不確実性に適用すべきです。例えば,業績ボーナスとして株式を受け取る企業の権利の公正価値は,株式自体の価格又は価値の変動だけでなく,業績ボーナスを受け取るかどうかの不確実性にも関連しています。本基準は,このように現金以外の対価の公正価値が変動する理由が企業の履行に関連する不確実性にもある場合には,公正価値の見積りにあたって,変動対価の見積りの制限(本基準第56項~第58項)を適用することとしています(BC 252)。

 

☞企業は,顧客が約束した現金以外の対価の公正価値が変動する理由が対価の形態(対価自体の価格又は価値の変動)によるものだけでない場合には,変動対価の見積りの制限(本基準第56項~第58項)を適用する必要があります。

 

4.企業による契約の履行を促進するための財又はサービス

 

顧客が企業による契約の履行を促進するために財又はサービス(例えば,材料,設備又は労務)を拠出する場合には,企業は,拠出された財又はサービスに対する支配を企業が獲得するのかどうかを評価しなければなりません(第69項)。

企業は,拠出された財又はサービスに対する支配を獲得する場合には,当該財又はサービスを,顧客から受け取った現金以外の対価として会計処理しなければなりません(第69項)。したがって,企業は,契約において約束された現金対価の金額に,拠出された財又はサービスの公正価値を加算して取引価格を算定し,契約におけるそれぞれの履行義務に配分します。

これに対し,企業が拠出された財又はサービスに対する支配を獲得しない場合には,当該財又はサービスは依然として顧客が支配していますので,取引価格に含めません。

 

5.Step3-④ 顧客に支払われる対価

 

Step3「取引価格を算定する」において,企業は,顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払うか,又は支払うと見込んでいる対価は,取引価格(収益)の減額として会計処理する必要があります(第70項)。

ここにいう対価は,現金又は企業に対する債務の支払に充当できるクレジット,クーポン,バウチャー等であって,顧客から受け取る財又はサービス(企業から顧客に移転する財又はサービスとは別個のものに限ります。)との交換のための対価でないものをいいます。

 

6.顧客に支払われる対価

 

顧客に支払われる対価

顧客に支払われる対価とは,企業が顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払うか,又は支払うと見込んでいる対価であって,顧客から受け取る財又はサービス(企業から顧客に移転する財又はサービスとは別個のものに限ります。)との交換のための対価でないものをいいます。

企業は,顧客に支払われる対価を,取引価格(収益)の減額として会計処理します(第70項)。

 

類似の支払の会計処理

企業が顧客又は顧客の顧客に対価を支払い,又は支払うと見込んでいる場合,その対価は,(a) 顧客への移転を約束した財又はサービスに係る値引き又は返金のほか,(b) 顧客から受け取る財又はサービスとの交換のための支払,あるいは(c) 両者の組合せの形式による場合があります(BC 255)。顧客に支払われる対価の形態には,現金のほか,企業に対する債務金額に充当できるクレジット又は他の項目(例えば,クーポン又はバウチャー)も含まれます(第70項)。

企業は,これら類似の支払が以下のいずれであるのかを決定し,会計処理します(2010ED 48)。

a 顧客への移転を約束した財又はサービスに係る値引き又は返金

 企業は,取引価格(収益)の減額として会計処理します(第70項)。

 顧客に支払われる対価に変動性のある金額が含まれている場合には,企業は,変動対価に関する本基準第50項~第58項(変動対価の見積りが制限されるのかどうかの評価を含みます。)に従って取引価格を見積ります(第70項)。

b 顧客から受け取る別個の財又はサービスに対する支払

 企業は,仕入先からの他の購入と同じ方法で会計処理します(第71項)。

c aとbの組合せ

 顧客に支払われる対価が,企業が顧客から受け取る別個の財又はサービスの公正価値を超える場合には,企業は,その超過額を取引価格(収益)の減額として会計処理します(第71項)。

 企業が顧客から受け取る財又はサービスの公正価値を合理的に見積れない場合には,顧客に支払われる対価の全額を取引価格(収益)の減額として会計処理します(第71項)。

 

類似の支払と区別する指標

企業が,顧客への移転を約束した財又はサービス(企業の財又はサービス)とは別個の財又はサービス(顧客の財又はサービス)を顧客から受け取り,当該財又はサービスとの交換のために顧客に支払われる対価は,仕入先からの他の購入と同じ方法で会計処理しなければなりません(第71項)。

仕入先からの他の購入と同じ方法で会計処理するかどうかは,企業が受け取る財又はサービス(顧客の財又はサービス)が,顧客への移転を約束した財又はサービス(企業の財又はサービス)とは別個のものであるかどうか(本基準第27項~第29項参照)が指標となります(BC 256)。

例えば,企業が顧客である販売業者に製品を販売するとともに,顧客から製品陳列サービス(製品の在庫保管・展示等)の提供を受け,当該サービスに対する支払を行うとします。

製品陳列サービスは,企業が取り扱う製品なしにそれ単独で便益を得ることができませんが,企業が取り扱う製品は企業にとって容易に利用可能な他の資源であり,それと組み合わせて便益を得ることができます(第27項(a)参照)。

したがって,企業は,顧客から受け取る製品陳列サービスが,顧客への移転を約束した製品とは別個のものであると判定し,顧客からの別個の財又はサービスに対する支払として,仕入先からの他の購入と同じ方法で会計処理します。

 

顧客に支払われる対価の一部についての取引価額の減額

企業が約束した財又はサービスと交換に顧客から受け取る対価の金額と,当該顧客から受け取る別個の財又はサービスと交換に支払う対価の金額が,たとえそれらが別々の事象である場合であっても,リンクしていることがあります。例えば,顧客が,企業からの財又はサービスに対して,もし企業から支払を受けていなければ支払ったであろう金額よりも多く支払うことがあります。そうした場合に収益を忠実に描写するため,企業が受け取る別個の財又はサービスに対する支払として会計処理する金額は,当該財又はサービスの公正価値に限定し,公正価値を超過する金額があれば取引価格(収益)の減額として認識します(BC 257)。

上記(製品陳列サービス)の事例で,もし,顧客に支払われる対価が製品陳列サービスの公正価値を超える場合には,企業は,その超過額を取引価格(収益)の減額として会計処理します。

 

顧客の顧客に支払われる対価

顧客に支払われる対価には,企業が直接,顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者に対して支払うか,又は支払うと見込んでいる対価も含まれます。

例えば,企業が小売業者に製品を販売するとともに,新聞のチラシで消費者に割引クーポンを発行するとします。小売業者は,企業の製品の販売にあたって,消費者から割引クーポンの提示を受けたときは,代金を値引きするとともに,回収した割引クーポンを企業に提出し,企業から,消費者に値引いた金額を補償してもらいます。

このように,企業が直接,顧客(小売業者)から企業の財又はサービスを購入する他の当事者(消費者)に支払う対価も,顧客に支払われる対価に含まれます。この場合の対価の形態は,顧客(小売業者)が企業に対する債務金額に充当できる割引クーポンであり,企業は,顧客に対し,消費者が企業の製品の購入にあたって提示した割引クーポンを企業に提出することを条件として,消費者に値引いた金額を補償することを約束しています。

企業は,顧客から,割引クーポンと交換に別個の財又はサービスを受け取っていませんので,取引価格(収益)の減額として会計処理します。

 

☞企業は,顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払うか,又は支払うと見込んでいる場合に,顧客に支払われる対価と類似の支払を区別し,①顧客への移転を約束した財又はサービスに係る値引き又は返金については,取引価格(収益)を減額し,②顧客から受け取る財又はサービス(企業から顧客に移転する財又はサービスとは別個のものに限ります。)と交換のための対価については,仕入先からの他の購入と同じ方法で会計処理し,③①と②の組合せについては,企業が顧客から受け取る別個の財又はサービスの公正価値を超える場合にその超過額を取引価格(収益)の減額として会計処理します。

 

7.取引価格の減額の方法


取引価格の減額の会計処理を行う時点

顧客に支払われる対価を取引価額の減額として会計処理する場合には,企業は,次の事象のうち遅い方が発生した時点で(又は発生するにつれて),収益の減額を認識しなければなりません(第72項)。

a 企業が,関連する財又はサービスの顧客への移転についての収益を認識する時

b 企業が対価を支払うか又は支払を約束する時(支払が将来の事象の発生又は不発生を条件とする場合であっても)

顧客に支払われる対価を取引価額の減額として会計処理する場合には,関連した履行義務の充足時に収益を減額して認識します。また,企業が履行義務を充足して収益を認識した後になってはじめて顧客に支払われる対価を約束する場合もありますが,この場合は,既に認識した収益の減額を直ちに認識することになります。

 

顧客に支払われる対価の変動性

顧客に支払われる対価に変動性のある金額が含まれている場合には,企業は,変動対価に関する本基準第50項~第58項(変動対価の見積りが制限されるのかどうかの評価を含みます。)に従って取引価格を見積ります(第70項)

本基準は,企業が遅くとも顧客に支払われる対価を「約束」する時点で取引価格に反映すべきである旨を明確化しています。企業は,将来の事象の発生又は不発生を条件として顧客に支払われる対価を約束する場合も,約束の時点で,その不確実性を反映して取引価格を測定します(BC 258)。

上記(割引クーポンの発行)の事例で,企業は,①小売業者に製品を引き渡した時,又は②消費者にクーポンを発行した時のいずれか遅い時に,収益の減額を認識します。その時点では,消費者が割引クーポンを行使するかどうかという不確実性のため,顧客に支払われる対価に変動性のある金額が含まれています。そこで,企業は,変動対価に関する本基準第50項~第58項に従い,変動対価の見積りが制限されるのかどうかの評価も含めて,取引価格を見積ります。

 

☞企業は,①約束した財又はサービスの顧客への移転についての収益を認識する時,又は②企業が対価を支払うか又は支払を約束する時(支払が将来の事象の発生又は不発生を条件とする場合であっても)の遅い方が発生した時点で(又は発生するにつれて),収益の減額を認識します。企業は,企業が対価の支払を約束する時点で,顧客に支払われる対価に変動性のある金額が含まれている場合は,変動対価に関する本基準第50項~第58項(変動対価の見積りが制限されるのかどうかの評価を含みます。)に従って取引価格を見積ります。

投稿者: 弁護士 片山 智裕

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